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は じ め に

鉄瓶でお湯を沸かしている間にペーパーの端を折り曲げて、
コーヒー豆を手挽きのミルでカリカリゴリゴリ。
豆が挽き終わる頃にはちょうどお湯も沸いて
コーヒーをいれる準備が整う。

銀のポットにお湯を移し替え
最初はポーンとお湯を置く感覚で。
あとは呼吸をするようにお湯を注いでいく・・・

と、ここまで書いておきながら、実はコーヒーをいれているときには
ほとんど何も考えていないということに気が付いた。
普段、呼吸をすることを意識していないのと同じみたいに。

雨の日も晴れの日も。
朝からウキウキとウカレているときも
イヤなことがあって不機嫌なときさえも。
変わることなくほとんど毎日。
飽きもせずこの作業を続けている。

coffee

『おいしいコーヒーをいれるために』という本を出してから早いもので8年。
文章を書くお仕事をするようになったのも、
私が今こうしているのも全てはあの本がきっかけになりました。

コーヒーについて何も知らなかった私が、おおもととなる大切なことを知ったお陰で
それまでよりもずっとコーヒーが好きになったし、
いれること自体もどんどん楽しめるようになって・・・
それはまるでコーヒーの扉が目の前でパカーンと開いたようでした。

あの本はコーヒーのきほんの「き」とか素材の「素」とか、

なんて言うんだろ。

もっと違う言い方だと、「コーヒーのたね」のような本があったらいいなぁ
というただ純粋な思いがはじまりだったように思います。

コーヒーの専門家でもカフェや焙煎をしているわけでもない私が、
あの本を出したことによってコーヒーに関わるお仕事をしている方々と
(またそれ以外の方々とも)知り合う機会がずいぶんと増えました。
当然といえば当然のことなのかもしれませんが、私にとってはとても意外な上に、
新鮮な出会いの連続で、それは今でも続いています。


それらの出会いやコーヒーにまつわるおもしろいできごとは、
瓢箪から駒ならぬ「瓢箪からコーヒー」なことばかり。

hyoutan

そもそもコーヒーの本をつくることだって、言ってみたら「瓢箪からコーヒー」だったと思います。

そういえばつい先日。
知人と食事をしていたらたまたまアフリカの瓢箪の話が出てきて
「びっくり!」なんてことがありました。
知人はそのときはもちろんこの連載のタイトルなど知りません。
コーヒーと思っていたら今度は瓢箪!?

思いもよらない不思議なかたちでつながっていくできごとは、
ときには大変なこともあるけれど、やっぱりおもしろいことの方が多い気がします。

新しく始まるこの連載ではそんなおはなしを毎月ぽつりぽつりと。

さぁ! はじまり、はじまり〜。
 


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