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さて、空はすっかり曇りました。
高原を走る国道359から砺波平野を走る国道156と走り継いで進む。
平野には水田が広がっている。
ぽつんぽつんと数百メートルの間隔をおいて、風呂屋と見まがうほど大きな四角い家が建ち、
それぞれに屋根より背の高い木が植えられているのだけれど、どういう訳か屋根の高さまで枝打ちされている。
数百メートル進んでは車を停めて「へーっ、、、ほーっ、」と眺めていたら
おばあさんが、「何かおもしろいものでもありますか?」と声をかけて下さる。
「はぁ!家が、木が、大きくてびっくりしています」と答えると
「はぁ?」と腑に落ちない風に、でもまぁ、暇だし、という微笑み。
こちらも、これ以上、説明のしようもないので、ちょっとバツ悪く微笑み返し。
「木は、台風が怖いからね、うちは全部切っちゃったよ。倒れてきたら家が壊れてしまうから」
「倒れる?」
「倒れるよ、台風が来るとね」

       帰って調べてみたところ砺波平野は日本三大散居村のひとつなのだそうである。
       そのうえ、住居面積日本一だもの。
       ニョキニョキ植えられていた木には「カイニョ」という名前がついている。
       防風林であり、冬の燃料であり、増改築の材料であり実が成れば食糧の役目も果たしていたというけれど、
       おばあさんの話の通り、3年前の台風で倒木の被害が多く出たという。燃料も食料も充実の今、
       安全のために極端に枝打ちされて、おもしろい形になっている。
       例えば、工場の形を見ていても思うのだけれど、必要に迫られて出来た形って、
       頭の中でなんとなく出来てしまった常識の形を超えていて刺激的。


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