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何はなくとも土づくり!
寒い冬がようやく終わり、春がやってきました。
我が家の庭はいつものように、
ボケが咲き、ゆすら梅が咲きと順番に花をつけ、
春の訪れを教えてくれました。
ボケ
ユスラウメ
今年の冬は各地で大雪となりましたね。
大変な思いをされた方も多かったことと思います。
我が家の庭も一面真っ白になりました。
庭のテーブルや椅子には見た事もない量の雪がつもり、
木々は重たい雪に押されてしなだれ、
中には折れてしまうものもありました。
折れたことは残念ではありましたが、それも自然のなりゆき。
せっかくたくさんの雪が降ったのだからと、
折れた木々やテラスの屋根の穴(空いてしまいました!)には目をつぶり、
庭に大きな雪だるまを作って楽しみました。
冬はどんな風に庭を楽しんでいるのかと
質問されることがありますが、
何もないことを楽しむ、と答えるようにしています。
秋に木々や草花が枯れ、冬やがやって来ると、
初夏の頃の鮮やかに茂っていた緑が嘘のように
何もなくなってしまいます。
それはとても寂しい風景です。
でも何もなくる時期があるからこそ、春が待ち遠しいのです。
春になり、小さな芽が出始め、
少しずつ庭が緑を取り戻して行くとき、
ああ、やっぱり緑って美しいなあ、きれいだなあ、
元気が出るなあと、心から楽しめている気がするのです。
そういうわけで、冬は枯れるがままにして、
庭には休憩時間をとってもらいます。
手入れも全くしません。
こちらもラクをさせてもらいます。
●冬の間の土作り
そんな何もしない冬を毎年過ごしているのですが、
なるべくやろうと思っていることがひとつだけあります。
それは、土作りです。
庭には、冬のうちにたくさんの緑を育てた疲れを取ってもらい、
春が近づいてきたら、これからまたたくさんの緑を育てるために
栄養補給をしてもらう。そんなイメージです。
1)土を休ませる
難しいことは特にありません。
まず、冬の庭をにぎやかにしようとしないことです。
例えば秋に花が終わり、庭がさみしくなってしまうと、
冬に咲く花を代わりに植えたくなるかもしれません。
でも次にやってくる春には数多くの花やハーブの苗が出回り、
それらをまた植えたくなってしまうものです。
そんな風にずっと庭を飾っていたら、
土はいつ休んだらいいのでしょう?
土はいつも緑に栄養を与え続けているのですから、
いつかは燃料切れになってしまうはずです。
せめて1年に1回ぐらいは休憩させてあげたいと思うのです。
2)堆肥をすきこむ
そしてできれば、庭の落ち葉を集めて堆肥を作り、
それを春がやってくる前に、土にすきこむようにしています。
堆肥は一年を通して作っています。
自分が食べた野菜クズをコンポストに入れ、
土と混ぜるだけの簡単なものです。
夏にはよく発酵し、野菜は土に消えてゆきます。
それらに秋冬に落ちる枯葉と混ぜあわせたものを
堆肥として使っています。
3)その他
他にも、冬に限ったことではありませんが、
すいかやみかんを庭で食べては種をとばしたり、
番茶や紅茶などよく飲むお茶がらはそのままばらまいたりと
日々の暮らしの中から出るものを
栄養になあれ!と土に還しています。
文字にすると面倒に感じるかもしれませんが、
おそらく世のガーデニング好きの方から見ると、
びっくりするくらい適当で、
あきれるくらい手をかけないやり方です。
●ゼロからの土作り、庭作り
そんな風に手をかけずにいられるのは、
この庭をはじめたときに、しっかりと土作りをしたからです。
あのとき土台をしっかりと作ったから大丈夫、
あとはもし私が堆肥をすきこまない年があったって、
問題ないだろうぐらいの気持ちでいます。
私は庭をゼロから作りたくて、この家に越して来ました。
内見のときに見た、雑草で埋め尽くされた庭を見て、
ここなら私のやりたいことができる!と
わくわくしたことを思い出します。
(不動産屋さんからは、この雑草だらけの庭がネックで
半年も空いていると聞きました。
おかげで家賃交渉もスムーズでした!)
引っ越した夏の終わり、
リビングから見える庭はこんな様子でした。
確かに、これでは物件を見送りたくなるかもしれません。
まずはこの雑草を抜くことから、
我が家の庭作りは始まりました。
1)雑草を抜く
一人で全てやろうと思っていたのですが、
引越の疲れで、倒れてしまったこともあり、
草むしりはシルバーセンターの方に頼みました。
おじいさま達はとても丁寧に仕事をしてくださる方が多いので、
近所にそういったサービスがある場合は、利用するのも手です。
木の剪定もやってもらえることも多いと思います。
おかげでこんなにすっきりしました。
しかし、働いてくれたおじいさん曰く、
おそらく何年も雑草が伸び放題だったから、
根が半端なく頑丈で、そして長く絡み合っている、
草は抜いたが、根まではできなかったから、
本気で庭をよくしたいなら根を抜いたほうがいい、とのこと。
先ほどの写真もよく見ると、土の表面に根が見えます。
土を掘ってみれば、確かにざくざくと根が出てきます。
これはなかなか手強いとひるみましたが、
土は素晴らしいよ、いい土だ、いい庭になる、
という言葉を残してくれたおじいさんに励まされ、
秋いっぱいの数ヶ月をかけて端から端まで、
根を抜く作業を続けました。
2)土を掘り返す
ようやくおおかたの雑草の根を処理したあとは、
畑仕事が得意だった祖父の力を借りようと、
広島までわざわざ祖父の遺した鍬と鋤を取りに行き、
それらを使って、土を掘り返してゆきました。
耕せば、まだまだ雑草の根は出て来ます。
それらも根気よく取って行きます。
縦に掘り返したあとは、横に掘り返す。
を何度か繰り返しました。
土をしっかり掘り返し、空気を含ませてふかふかになれば、
以前の家から移植する木々や、新しく蒔く種が、
ラクに根を伸ばすことができると思ったからです。
そうして繰り返していくうち、
土は見事にふかふかになりました。
手で触ってみれば、とても気持ちよく、
自分も手や足をつっこみたくなるくらいでした。
これなら緑も気持ちよく育つはず!
3)栄養を与える
ふかふかになったところで、堆肥と石灰をすきこみました。
石灰は土の酸度を調整するために使います。
日本は雨がよく降るので、
土は酸性に傾いていることがほとんどです。
そのため、石灰を加えて中和させ、植物が育ちやすい土にします。
(酸性の土壌が好きな植物もあります。
植える前に調べてみてください。)
こうして夏の終わりに引っ越したあと、
土台作りを冬の終わりまでかけ、
ようやく我が家の庭はスタートラインに立ちました。
4)配置を考える
このあとは、楽しい事ばかりが待っています。
以前の家からもってきた木々や、レンガを並べて
配置決めをします。
植物は植え替えられることがとてもストレスですから、
配置決めはとても重要な課題です。
デザインはどうか、使いやすさはどうか、
花壇を作るか、作るならいくつで、どの位置でと、
リビングから、二階から様々な角度から眺めて確かめます。
それぞれが育つ様子を予想することも大切です。
すばやく成長する木もあれば、
とてもゆるやかに育つものもいます。
すっとまっすぐ伸びる木もあれば、
まっすぐに伸びるなんてことはほぼ不可能だったり、
四方八方に枝を伸ばして横に広がったりと、
木によって個性は様々です。
大きくなったときに、ぶつかりすぎないか、
緑が生い茂ったときのバランスはどうか等、
頭の中でシュミレーションしてゆきます。
また、常緑樹、落葉樹の配置も大切です。
外からの目隠しにもと思うなら常緑樹にお願いしたいし、
冬の日差しを遮らないようにと思う場所には
落葉樹にお願いしたいものです。
木々が大きくなった時を予想して、
日陰が好きなハーブ、陽当たりが好きなハーブを
植える場所、種をまく場所も同時に考えて行きます。
一日の陽当たりも考慮して、
日差しがとにかく大好きなもの、
半日あたれば十分なもの、
日差しがあたらず明るいぐらいがちょうどいいもの等の
好みも頭に入れておきます。
などなどと考える作業は、なんとも楽しい時間です。
鉢ごとになんども置き場所を変えて、検討してゆきます。
その後、フカフカの土に木々を移植し、
苗を植え、種を蒔きました。
そして2年後。
こんな庭に成長しました。
雑草を抜き、ほとんど何もなかったところから、
たった2年でこんなにも緑が庭を彩ってくれました。
それもこれも土台が気持ちよかったから
ついつい伸びてしまった!
のではないかと思っています。
予想外のこともありました。
庭にはもともとコナラ、エノキ、
千両、ソテツ、柚子の木があったのですが、
それらは引越て来た当初、
まるでもう生きるのを諦めてしまったかのように
存在感がなかったのです。
しかし、土作りをし、
周りの緑がぐんぐんと成長するにつれ、
自分達が木であることを思い出したかのように
すごい勢いで枝や葉を伸ばし始めたのです。
リビングから見えるエノキや、
玄関の横にそびえるコナラは特に大きくなりました。
毎日かっこいいねえ、と声をかけていたからかもしれません。
私の背丈ほどしかなかったのに、4年目の今は
大きく枝を広げて、二階を通り越す勢いです。
ゼロから庭を作ってみて確信したことがあります。
緑が快適に過ごせるために最も大切なのは、
水やりや剪定などより、なにはなくとも
土作りではないかということです。
緑は一度そこに芽生えたら、根をおろしたら、
自分の意志では動くことができないからです。
土は彼らの一生を大きく左右すると思うのです。
もしこれから庭作りをはじめようとする方、
そしてもしくは庭はあるけれど、
どうもうまく作ることができないという方がいれば、
土作りに思いを馳せてみて下さい。
土作りはもちろん、庭だけのことではありません。
小さな鉢の中の土にも言えること。
その鉢の中の土はふかふかですか?
かっちかちに固まってはいないでしょうか?
緑が毎日、寝て起きて、そして栄養も吸収する土。
どんなにかいがいしく世話をしても、
肝心の土が不快ならば、育つはずもありません。
言い換えれば、土が快適ならば
勝手に育ってくれるということでもあります。
勝手に育ってくれれば、こちらは
手を入れる必要がほとんどなくなります。
もともと緑は人間が手を入れなくたって、
彼らはちゃんと生きてこれたのです。
ただ、彼らが生きる場所を、
人間が手を入れたことで住みにくくしてしまっていたり、
もともと生きるのには見合わない場所に植えたり、
無理矢理成長させようとしたりしているだけなのです。
もっと自然に、緑が快適に暮らせるように、
その為にはスタート前が大切です。
それが広い庭でも小さな鉢でも。
緑のための土作り、ぜひ試してみてくださいね。
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