職人の手
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時代が変わっても、
人の手にしか生み出せないものがある - 職人、それは日々粛粛と手仕事をする人たち。ものづくりだけでなく、その生き方が、職人たるゆえんです。ガラスペン、洋傘制作、結桶師、陶工、日本茶農園など、過去の知恵や技を受け継ぎつつ未来への挑戦を続けている、30〜90代の職人16名の取材記です。
編集者のおすすめポイント
かつて私たちの暮らしのまわりにあったものは、手をかけ、時間をかけてつくられたものばかりでした。時代が変わっても、人の手にしか生み出せないものがあります。日々こつこつと、ただひたすらに、それと向き合う職人たち。「特別なことはなにもない。ただ、毎日つづけているだけ」という言葉に、その矜持がにじみ出ています。時代を越えて受け継がれるものと、変わっていくもの、新たに生み出されるもの。ガラスペン、洋傘、結桶、陶工、日本茶農園など、ものづくりの背景や職人という生き方を知る、著者が惚れ込んだ16人の職人の物語です。
●はじめにより
・・・・・・とはいえ、誰かを取材して記事を書くことは、私の商売である。もやもやとした気持ちを抱えながらも、日々、人に会い、それらを綴っていくしかない。
綴りながらも、やはり、私はなにも成し遂げていない。つまるところ、「なんにもできないという事実」が、重くのしかかっていた。
でも、そんな日常を繰り返し仕事に没頭するうちに、その事実が少しずつ小さくなり、あるとき、すーっとラクになった。ありていに言えば、開き直ることができたということだけれども。
そう、私自身は無力でも、私には「なにかを成している人のことを伝える役割がある」と、自分の仕事に誇りを持てるようになったのだった。
以来、その気持ちで、プロフェッショナルな人々を取材し続けている。・・・・・・