アノニマ・スタジオWeb連載TOP > かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~ もくじ > チャプター1 はじめに
文・写真・題字/中村家
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チャプター1 はじめに
わたしたち家族が東京から少し離れた里山に越してきて丸3年。空間デザインをする夫、家族をテーマにものを書いているわたし、9歳の娘と3歳の息子、垂れ耳うさぎのバターで、バブル期に建てられた湖畔の別荘を、直したいところや必要なもの、思いついたもの、その時々の気分できまぐれに、自分たちで改装しながら暮らしてきました。夫はもともと広告やMV、イベントなどあらゆる空間を作るのが仕事でDIYが得意。見た人が「わあ」とか「おお」とか喜んでくれる夢のあるものつくりではあるけれど、作ったものは撮影やイベントが終わった瞬間ほとんどゴミになる、そんな仕事でもありました。再利用できそうなものは保管し作り直しつつも、大半は廃棄せざるをえない。表に出るきれいなものが、すぐに大量のゴミとなり、お金を得る。そのサイクルに家族の暮らしは支えられている。「ずっと続けていいことじゃないと思う」と夫は言い、どうしたらいいか考えていました。目の前の仕事のこと、生活のこと。わたしたちができること、したいこと。
思いついたのは廃材を使って、家族の暮らしをブリコラージュしていく計画。 ブリコラージュとは、その場で手に入るものを寄せ集め、試行錯誤しながら新しい何かを作ること。
不要になってしまったものから、必要なものを生み出してみよう。これはとてもいいアイデアに感じて、家族それぞれ作りたいものをあげリストにしてみました。…けれどつぎつぎにやってくる仕事に追われ、ブリコラージュに着手できぬままいた、この春。
新型コロナの影響を受け、夫の仕事はどんどん中止がきまっていきました。最後に残っていた仕事の中止連絡が来た夜、「変わる時だってことだ!」と言った夫はなんだかスッキリしていました。この先、もう同じことをするべきじゃない。だけど、じゃあ何をするべきなんだろう。
矛盾を感じながら、それでも他の道が浮かばず、選べず、そのままにしてきた一つ一つが浮かびました。「表に出るきれいなものが、すぐに大量のゴミとなり、お金を得る」夫が仕事で抱えてきた矛盾はそのまま、わたしの、この世界の、暮らしの矛盾そのものでもあると思うから。
仕事、暮らし、思い。矛盾が生まれない「なにか」を今、始めたい。
わたしの仕事も続々なくなり、子どもたちの学校も保育園も休みになり、とにかく時間はたっぷりあります。
それから大量の廃材も。
家族でつくったリストを作り始めよう。
でも、わたしたちのブリコラージュは、このリストを作っていくだけじゃない。仕事を、暮らしを、もう一度どしんとずどんと、ここから作っていく。そんなことをしていきたい。収入は絶たれ、行き先不明。ぐらつく気持ちがないわけじゃない。(夫はないらしいけど)
それでもきっと、「かぞくのブリコラージュ」は自分たちで暮らしをつくる、喜びに満ちた日常の発明記なのです。
つくるものリスト
『夢のジムニー』for 息子『はじめての一人部屋はストローベイルハウス』for 娘
『シェルター書斎』for 妻
『バターハウス』for うさぎ
etc....
作るものはその時に必要な物や気分による
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中村俵太(父/夫)
「HYOTA」として空間デザインを生業にしつつ、中村家のあらゆる『家族』活動のディレクター的立ち位置も。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。家族愛は強いがピントがいつもややずれがち。
中村暁野(母/妻)
家族や生活をテーマに執筆活動を行なっている。理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。ブリコラ生活の果て2021年夏「家族と一年商店」がオープンし小商店主という予想だにしていなかった人生展開もスタート中。
中村花種(娘)
繊細で敏感な子ども時代を経て、現在爆発的パワーで家族を圧倒する思春期入り口の13歳。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で壁を越え、自分の世界を築こうと成長中。現在両親のやることなすこと、言うことスベテが気に入らない反抗期真っ只中。
中村樹根(息子)
マイペースでごきげんな6歳児。人類みな友達的オープンマインド。恐竜がだいすきで1日の半分、心は恐竜の世界へ。甘いもの大好き。虫歯になりがち。姉とはトムとジェリーのような関係。
バター(うさぎ)
花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っていた、アメリカンファジーロップのオス。2022年の3月、天国へ...。花種さんの部屋の前の、ユスラウメの木の下に眠っている。
家族カレンダー
中村暁野定価 1760円(本体価格1600円)
ひとつの家族を自身の家族で取材して制作する雑誌『家族と一年誌 家族』編集長である著者による初めての自著。ブログに綴った5年の間には、たくさんの幸せな日とそうでない日とがありました。「家族」を通して自分と社会に向き合い続けた実験の記録。一日々々のかけがえのなさを感じられる一冊です。
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