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世界自然遺産、屋久島。「海上のアルプス」とも呼ばれ登山のイメージが強い島ですが、登らずとも楽しめる自然やスポットがたくさんあります。そんな屋久島の知られざる魅力を紹介している旅ガイド『Hello!屋久島』。屋久島の港、宮之浦で一湊珈琲焙煎所を営んでいる著者の高田みかこさんが、旬の屋久島情報をお届けします!
10 騒がしい植物たち。
植物が呼び止める。
「こっちだよ」と、星型のグミ(茱萸)の花。触れると砂糖菓子のように、ほろほろと崩れ落ちる。
樹脂製のようなつるんと丸いつぼみが光るトベラ(海桐花)の花は、純度の高い生クリームみたいなアイボリー。優美な薄紫のセンダン(栴檀)の花は、衣香を薫きしめた着物のよう。
どれも、潮風をたっぷり浴びながら枝を伸ばすたくましい照葉樹。海辺を歩くと、騒がしく声をかけてくるのです。
この季節、沿道で一番目立つのは、島で「ヘコハチ」と呼ばれるシャリンバイ(車輪梅)の白い花。その名のとおり、梅を思わせるほの甘い香りをたたえた花です。洗いざらしの木綿のような、白く厚みのある五弁の花の中心に、風呂上がりの頬のような健康的な赤いシベが集まっています。触れても花びらは散らず、枝先にしっかりとくっついたまま枯れるので、たくましさを感じるのかもしれません。
車輪梅は、大島紬の染料に重用されるため、潮風に強く、育てやすい貴重な換金作物として、島のあちこちに植えられ、輸出されなくなった今でも、たくさん見かけることができます。
かつては、パチンコ玉ほどの黒紫の実の中から出てくる茶色の種を食用にしていたようですが、今は海の向こうに浮かぶ硫黄島だけにその風習が残っているそう。
もうひとつ、島を代表する初夏の香りといえば、ゴールデンウイークあたりが製造の最盛期に当たる新茶。本格的な緑茶栽培の南限ともいわれる、屋久島の特産品でもあるのです。太陽を受けてつやつやと光り輝く茶は、照葉樹を代表する木。かつては、前栽や畑の境界に茶の木を植え、春に摘み取った分をご近所で集まって大釜で炒るのが、島の年中行事でした。
今年は、春先に冷え込んだために例年よりも1週間ほど摘み取りが遅れ、4月頭からの出荷に。『Hello! 屋久島』p54の「八万寿茶園」でも、新茶の通販がはじまっています。
屋久島町の公立学校では、新学期から3週間通ったところで、休校。
ピカピカの上履きや体育館シューズが、休校中にサイズアウトしてしまわないか、ドキドキしています。
『Hello!屋久島』
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高田みかこ(たかた・みかこ)
屋久島の北の港町、一湊育ちの島ライター。東京の出版社に勤務したのちUターン。現在は、宮之浦のフェリービルディングで「一湊珈琲焙煎所」と一組限定の貸しコテージ「おわんどの家」を夫婦で営む。単行本の編集、里の取材コーディネイト、WEB サイト「屋久島経済新聞」「やくしまじかん」に執筆中。
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