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世界自然遺産、屋久島。「海上のアルプス」とも呼ばれ登山のイメージが強い島ですが、登らずとも楽しめる自然やスポットがたくさんあります。そんな屋久島の知られざる魅力を紹介している旅ガイド『Hello!屋久島』。屋久島の港、宮之浦で一湊珈琲焙煎所を営んでいる著者の高田みかこさんが、旬の屋久島情報をお届けします!
16 半径2kmの旅。
気軽な旅ができなくなって1年。
島から出かける側としてもたくさんの旅人を迎え入れてきた側としても、いつもと違う春夏秋冬に、ものたりないような、それでもふわふわ自由なような、地に足がつかない日々を過ごしています。
先日、毎年恒例の「一湊集落ハイキング」が開催されました。
街、山、川、海、いくつかのコースに分かれて、近くてもついつい車で移動してしまうご近所をじっくり歩いてみようという企画。当日申し込み制なので、晴天予報が確実になるのを持って、前日に参加決定。おむすびと水筒をカバンに詰めて、いざ出発です。
私が選んだのは、集落の北西に位置する標高166mの番屋峰コース。大漁旗を遠くから目視するための「番屋」の役割を果たした小山で、戦時中は航空監視団が常駐し空の「番屋」の役割を果たしていたといいます。
小学生の頃は、この山で落ち葉を集めて校内の花壇用の堆肥を作るのが、年中行事でした。学校の裏手に積まれた落ち葉の山が、分解されて少しずつ小さくなって土になっていく様子がおもしろく、ときどきブルーシートをめくって確認しては、悦に入っていました。
標高の低い照葉樹の森は、冬も緑豊かですが、夏よりも植物の勢いが弱く、歩きやすいのが魅力。登りはじめるとあっという間に汗ばんで、みんな上着を脱ぎ出し、長袖シャツ1枚の陽気です。
30分も登れば頂上。一湊シンボルのツインピークス、矢筈(弓の弦を引っ掛ける部分)岳を抱える岬の突端には、白い灯台、その麓の矢筈嶽神社の赤い鳥居、白い砂浜が広がる海水浴場、漁港には真っ赤な灯台、住宅がひしめき合う街並みや小学校、湾には川が光りながら流れ込んでいます。
戦後の食糧難には、耕せるところは片っ端から耕して畑にしたとあって、あちこちに猫の額ほどの小さな段々畑の石積み跡が残ります。そこから下って、川辺へ。途中、「かからん団子」の葉っぱになる薩摩山帰来の花を愛でたり、古いトンネルを探検したり、湧き水を飲んだり、たくさん寄り道をして、河原の大岩の上でお弁当を広げる頃には、歩き始めてから3時間も経過していました。
「見慣れた風景も、ゆっくり歩けばたくさんの発見がある」。半径2kmをゆっくり4、5時間かけて歩いた贅沢な冬の日となりました。
暖冬だなぁと思っていたら、急に冷え込んで遠い山に積雪したり、大シケで欠航が続いたり、三寒四温を繰り返しながら、確実に春は近づいています。
『Hello!屋久島』
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高田みかこ(たかた・みかこ)
屋久島の北の港町、一湊育ちの島ライター。東京の出版社に勤務したのちUターン。現在は、宮之浦のフェリービルディングで「一湊珈琲焙煎所」と一組限定の貸しコテージ「おわんどの家」を夫婦で営む。単行本の編集、里の取材コーディネイト、WEB サイト「屋久島経済新聞」「やくしまじかん」に執筆中。
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