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世界自然遺産、屋久島。「海上のアルプス」とも呼ばれ登山のイメージが強い島ですが、登らずとも楽しめる自然やスポットがたくさんあります。そんな屋久島の知られざる魅力を紹介している旅ガイド『Hello!屋久島』。屋久島の港、宮之浦で一湊珈琲焙煎所を営んでいる著者の高田みかこさんが、旬の屋久島情報をお届けします!
02 夏を告げる生き物たち。
「トッピョトッタカ(飛魚獲ったか)」とホトトギスが鳴くと、本格的な夏が来ます。
屋久島と種子島、鹿児島を結ぶ高速艇は「トッピー」と名付けられていますが、私の暮らす一湊では、大きな羽を広げて、水面を力強く蹴るように飛ぶこの魚を「トッピョ」と呼びます。
飛行機や高速艇を利用すれば早いけれど、鹿児島から屋久島まで4時間近くかかるフェリーに乗ると、太陽の光を反射させながら水面を飛ぶトビウオを、かなりの確率で目にすることができます。
漁法の移り変わりで今では漁期も延び、一湊で水揚げされることはなくなりましたが、かつては、産卵期の1ヵ月がトビウオ漁のシーズンでした。この時期ばかりは、老いも若きもトビウオのことで頭がいっぱい。学生も公務員も集落中の男たちが、深夜から早朝にかけてのトビウオ漁に駆り出されます。当然、昼間の教室では、居眠りをする生徒が続出、中には堂々と床に横たわるものまでいるしまつ。さらに、雨が降れば漁網や干物を取り込むために、男女問わず学校を飛び出していくものですから、教室にはわずかな生徒と教員だけが取り残されるのでした。
親から乗船の許しがなかなか得られなかった当時10歳の父は、夜中に漁船に潜り込み、網の中に隠れて見事デビューを果たしたのだそう。日の暖かさを残した漁網に包まれて眠った気持ち良さを、昨日のことのように語ります。
この季節、沿道を彩るのが、鮮やかなオレンジ色の「トッピョバナ(ヒメヒオウギズイセン)」と「コオニユリ」です。 「ヒメヒオウギズイセン」はその名の通り、檜扇を開くように扇型に花開く様子が美しいアヤメ科の植物。花弁の先端にいくに従って色濃くなり、触覚のように伸びた黄色のシベはどこかユーモラスで、親しみやすい雰囲気をたたえています。豊かに生い茂る細長い葉も青々と、花の色を引き立てています。
「コオニユリ」は、勢いよく開いて丸まった花びらとすんなり伸びた茎が可憐な花。散りばめられたまだら模様が、そばかすのようで、緋色の髪のアン・シャーリーを思わせます。
路傍を彩る花は、どんどん交代して、「トッピョトッタカ」なんて、野鳥や野の花にせき立てられる賑やかな夏の幕開けです。
屋久島と種子島、鹿児島を結ぶ高速艇は「トッピー」と名付けられていますが、私の暮らす一湊では、大きな羽を広げて、水面を力強く蹴るように飛ぶこの魚を「トッピョ」と呼びます。
飛行機や高速艇を利用すれば早いけれど、鹿児島から屋久島まで4時間近くかかるフェリーに乗ると、太陽の光を反射させながら水面を飛ぶトビウオを、かなりの確率で目にすることができます。
漁法の移り変わりで今では漁期も延び、一湊で水揚げされることはなくなりましたが、かつては、産卵期の1ヵ月がトビウオ漁のシーズンでした。この時期ばかりは、老いも若きもトビウオのことで頭がいっぱい。学生も公務員も集落中の男たちが、深夜から早朝にかけてのトビウオ漁に駆り出されます。当然、昼間の教室では、居眠りをする生徒が続出、中には堂々と床に横たわるものまでいるしまつ。さらに、雨が降れば漁網や干物を取り込むために、男女問わず学校を飛び出していくものですから、教室にはわずかな生徒と教員だけが取り残されるのでした。
親から乗船の許しがなかなか得られなかった当時10歳の父は、夜中に漁船に潜り込み、網の中に隠れて見事デビューを果たしたのだそう。日の暖かさを残した漁網に包まれて眠った気持ち良さを、昨日のことのように語ります。
この季節、沿道を彩るのが、鮮やかなオレンジ色の「トッピョバナ(ヒメヒオウギズイセン)」と「コオニユリ」です。 「ヒメヒオウギズイセン」はその名の通り、檜扇を開くように扇型に花開く様子が美しいアヤメ科の植物。花弁の先端にいくに従って色濃くなり、触覚のように伸びた黄色のシベはどこかユーモラスで、親しみやすい雰囲気をたたえています。豊かに生い茂る細長い葉も青々と、花の色を引き立てています。
「コオニユリ」は、勢いよく開いて丸まった花びらとすんなり伸びた茎が可憐な花。散りばめられたまだら模様が、そばかすのようで、緋色の髪のアン・シャーリーを思わせます。
路傍を彩る花は、どんどん交代して、「トッピョトッタカ」なんて、野鳥や野の花にせき立てられる賑やかな夏の幕開けです。
『Hello!屋久島』
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高田みかこ(たかた・みかこ)
屋久島の北の港町、一湊育ちの島ライター。東京の出版社に勤務したのちUターン。現在は、宮之浦のフェリービルディングで「一湊珈琲焙煎所」と一組限定の貸しコテージ「おわんどの家」を夫婦で営む。単行本の編集、里の取材コーディネイト、WEB サイト「屋久島経済新聞」「やくしまじかん」に執筆中。
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