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世界自然遺産、屋久島。「海上のアルプス」とも呼ばれ登山のイメージが強い島ですが、登らずとも楽しめる自然やスポットがたくさんあります。そんな屋久島の知られざる魅力を紹介している旅ガイド『Hello!屋久島』。屋久島の港、宮之浦で一湊珈琲焙煎所を営んでいる著者の高田みかこさんが、旬の屋久島情報をお届けします!
09 フェリーターミナルは別れの季節。
新緑にけぶる山から、甘い新芽の香りが運ばれる季節。 山そのものがふっくらと、ひとまわり大きくなるような芽吹きの季節です。遠くのぞむ里山の新緑も、橋の上に立つと目線の高さになって。ひとつの植物と思われていたものは、重なり合った数種類の木々の葉や小さな花々のグラデーションであることが、浮かびあがってきます。
スミレやカタバミ、キンポウゲにタツナミソウ、足もとには愛らしい野花。なかでも、ひときわ嬉しいのが、木苺の白い花。実りの季節を楽しみに、目の端でいつも木苺の花を探しています。
突然の休校措置からの卒業式。でこぼこの複式学級を率いてくれた先生の転勤も決まり、送別会は中止されたものの、記念品は贈ろうと、島の南部の「HONU」(『Hello ! 屋久島』p93)まで、足を伸ばしてきました。
秒針は、ウミガメの形にくりぬかれた夜光(やこう)貝。夜光貝は、「やくしま」の語源になったともいわれる、大きな巻貝。乳白色から苔色に変わる光沢のある厚い層が特長で、平安時代の宮中において、匙や盃に加工され、使われたといわています。
接着剤が乾くまで、徒歩5分のトローキの滝展望台までお散歩。卒業生5人で過ごしたわずかな時間。新緑の中、エゴノキが白いお星さまのような花をつけていました。
卒業生となる息子の同級生が5人になったのは、昨年のこと。4月にやってきてくれた2人の留学生のおかげです。1、2年間、助成金を受け取りながら、屋久島で子育てをする国内家族留学の受け入れが、息子の学校で、3年前から始まりました。
子ども時代の1年を海辺で過ごすもよし、移住の足がかりとして試しに住んでみるもよし。いろんなタイプの家族がやってきます。息子の同級生の1家族も、1年の留学を終え、この春、フェリーに乗って、島を離れていきました。
飛行機も高速艇もいいけれど、情緒があるのは、鮮やかな紙テープがはためくフェリーでの別れ。「蛍の光」が流れる中、ゆっくりと船は岸を離れます。堤防の先まで走って追いかけていく子どもたち。小さくなる船にいつまでも手を振っていました。
『小さな地域と小さな学校』(明石書店)
「黒潮留学」の取り組みについて、小さなコラムを書きました。
https://www.akashi.co.jp/book/b498417.html
『Hello!屋久島』
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高田みかこ(たかた・みかこ)
屋久島の北の港町、一湊育ちの島ライター。東京の出版社に勤務したのちUターン。現在は、宮之浦のフェリービルディングで「一湊珈琲焙煎所」と一組限定の貸しコテージ「おわんどの家」を夫婦で営む。単行本の編集、里の取材コーディネイト、WEB サイト「屋久島経済新聞」「やくしまじかん」に執筆中。
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