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第6回 セミ
~抜け殻編~
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ところで、セミの種類はいくつほど知っていますか? ここ東京で、一番身近に感じるのはアブラゼミです。翅が茶色いことで見分けがつきます。ジリジリと鳴きます。
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鳴き声で判断しやすいのは、ミンミンゼミでしょうか。翅は透明で体には緑色の模様が入っていて、とてもキレイです。名前の通り、ミーンミーンと鳴きます。
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アブラやミンミンに比べて小さいなと思ったら、ニイニイゼミかもしれません。アブラよりも高い声でチー、ジーと鳴いています。
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ほかのセミが鳴き出してから、後を追うように出てくるのはツクツクボウシです。夏休みの後半に鳴き声をよく聞きます。小柄でとてもかわいらしいです。
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西日本で一般的なクマゼミは、温暖化に伴って関東でも見られるようになりました。とても大きくて貫禄のあるセミです。午前中にシャアシャアと鳴きます。
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鳴き声は聞こえても、成虫の姿を全て見られるというわけではありません。木の随分と高いところに留まっていることも多いからです。実際、クマゼミの鳴き声がとても近いのに、どうしても見つけられないことがありました。でも、セミの抜け殻なら、割と簡単に見つけることができますね。公園、神社、学校、庭などで見つかります。我が家の庭でも、思わぬところにありましたよ。
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ところで、セミの抜け殻を見つけるには、幼虫が出てきた穴を確認すると手っ取り早いです。梅雨明けあたりから見られ、公園や神社などの草があまり生えておらず、踏み固められ硬くなっている場所がわかりやすいです。ポコポコとした穴があったら、幼虫が出てきた穴です。この穴がたくさんあれば、近くに抜け殻もあるはず。近くの公園でも、あちこちに穴が!
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木の表面についている抜け殻は目に留まりやすいですが、探していくうちに、葉の先にぶら下がっていることの方がずっと多いことに気づきました。これらの抜け殻を取ろうとすると、がっしりと葉に捕まっていることがわかります。おそらく無事に羽化するためには、木の表面よりもしっかりと足を引っ掛けられる葉の方が安全なのだろうと思います。
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さてセミの抜け殻は、セミの種類ごとにデザインが違います。なんとなく、どれも似たようなものだろうと思い込んでいましたが、結構なデザインの差があるのですね。違いを知ったことで、抜け殻採集が楽しくなってきました。
東京で一番よく見かけるのは、やはりアブラゼミの抜け殻です。次いでミンミンゼミなのですが、この2つだけがよく似ています。どちらも体調3センチ程度で、アブラゼミは触覚の第三節が長く、毛が多く生えています。また鼻のような部分の上部に黒ずんだ模様が見られます。ミンミンゼミは触角が細く、毛も少なく、第三節は他の節とほぼ同じ長さです。鼻の模様もありません。
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抜け殻を採集した時点で、触角が折れてしまっていることもあります。そんな時は、鼻のような部分の模様の有無に加えて、丸みを比べます。ミンミンゼミの方が丸みが強いです。
その他のセミの見分け方はとても簡単。ニイニイゼミは泥まみれです。笑ってしまうくらいにドロドロです。これはニイニイゼミは湿った土地が好みで、なおかつ体の表面がザラザラしているので土が付着してしまうのだそう。また他のセミに比べてひとまわり小さく、2センチ程度です。
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ツクツクボウシは小さく細く、色も薄くて殻も薄い。つまむと潰れてしまいそうなほど華奢です。
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まだ多いとは言えないクマゼミの抜け殻も、どうにか見つけることができました。成虫も大きいのですが、抜け殻も大きい。アブラゼミよりも大きく、お腹に突起があるのでわかりやすいです。
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オス、メスの区別はとても簡単です。これはどのセミの抜け殻にも共通で、おしりの突起がひとつならオス、ふたつならメスです。
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森林に多いヒグラシは見つかりませんでした。ヒグラシの鳴き声を聞いたことはあるものの、それがいつだったか思い出せません。この土地に幼少期から住んでいる大家さんに伺うと、もちろん昔はいたのだけれど、ここ最近は鳴き声をほとんど聞かないねとのことでした。やはり都市化がすすみ、ヒグラシには適さない環境になってしまっているのかもしれません。
抜け殻採集がすっかり楽しくなった私たちは、近所の公園、神社から足を伸ばし、自転車で行ける公園、電車に乗っていく公園など、私たちがよく行くお気に入りの公園、7ヶ所で抜け殻採集に興じました。そして、合計300匹ほどを採集。種類別の割合を調べてみることにしました。
2022年の東京、我が家がよく行く公園でのセミの抜け殻調べの結果発表です。
アブラゼミ:72.2%
ミンミンゼミ:22.5%
ニイニイゼミ:3%
ツクツクボウシ:0.9%
クマゼミ:0.9% となりました。
300体は決して多くはないですし、そもそも私たちがよく行く公園という偏った基準なので、データとしての信憑性は低いです。けれど、息子にとってはとても有意義で重要なデータだと思います。まだ行動範囲の狭い子どもにとって、身近な場所を調べることが最も適切で、また最大限に関心を持てると思うからです。
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動く幼虫や成虫は苦手というお母さん、お父さんもいらっしゃるかもしれませんが、抜け殻なら動きません。苦手意識がある方でも、子どもと一緒に採集を楽しめるのでは。抜け殻を集めることで、近隣にはどんな種類がいるのか、どんな割合なのか、抜け殻の特徴や見分け方など、いろんな角度から調べることができます。セミがいるところは必然的に木がたくさんある場所なので、都市部であっても意外と涼しく、気持ちの良い時間にもなりますよ。ぜひ来年の自由研究のテーマに親子で取り組んでみてはどうでしょうか?
次回は、感動しかないセミの幼虫の羽化についてです。
セミ | |
---|---|
見つけやすさ | ★★★★★ |
自由研究に しやすさ | ★★★★★ |
子どもと一緒に 楽しめる度 | ★★★★★ |
<<連載もくじ はじめに>>
プロフィール
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良原リエ
音楽家。アコーディオン、トイピアノ、トイ楽器の奏者として、Eテレ「いないいないばあっ!」の音楽をはじめ、映画やテレビ、他アーティストの楽曲などの演奏、制作に関わる。インテリア、庭づくり、ハンドメイド、リメイク、子育てなどライフスタイル全てが活動・表現の場になっており、親子、子ども向けのワークショップ、イベントプロデュースなども行っている。著書に「食べられる庭図鑑」「たのしい手づくり子そだて」「まいにちの子そだてべんとう」(アノニマ・スタジオ)「トイ楽器の本」(DU BOOKS)など多数。
instagram ID : rieaccordion
良原リエさんの本
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食べられる庭図鑑
広い庭がなくても大丈夫! 小さな庭やベランダで始められる、家庭菜園や庭作りのアイデアをたっぷり紹介。「野菜」「ハーブ」「果樹」「雑草・野草」など、育てて楽しい、食べて美味しい植物88種と簡単なレシピを掲載。一年を通して自然に親しむ暮らしを提案します。アノニマ・スタジオWebサイトTOP > たのしい生きもの観察|もくじ > 第6回 セミ ~抜け殻編~
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