第10回 冬の生きもの探し
寒い日が続きますね。冬の間は生きものにあまり会えないので、少し寂しいなあと思います。
生きものについてさほど興味がなかった頃は、全てが寒さに負けて死んでしまったのだろうと思っていました。でも実際は、成虫の姿で活動していないだけであって、寒さに耐えうるそれぞれの形で、冬を過ごしていると知りました。
例えば、我が家の庭に棲みついているヒキガエルは、11月には姿を見せなくなります。庭のどこかに身を隠し、冬眠します。冬眠と言うと、深く掘った穴の中にいるようなイメージですが、実際はもっと浅いところにいるようです。冬場にプランターを掘り返したら、ヒキガエルのケロコと目が合い、慌てて土を掛け直したことがあります。深さは10センチもなかったと思います。積もった落ち葉の下にいることもよくあることだそうです。
落ち葉と言えば、その下は小さな虫たちの越冬場所になっています。落ち葉や鉢の下にワラジムシやダンゴムシが隠れています。
ヤスデも見えますね。苦手な方もいるかもしれませんが、これらは落ち葉などを食べて分解し、土を豊かにしてくれる益虫です。冬に限らず、たいていこうして見えにくい場所にいますから、そのままにしておきましょう。
落ち葉のその下の土を掘り返してみれば、たいていコガネムシの幼虫が見つかります。ここなら安全に、あたたかく越冬できそうです。カブトムシやクワガタも同じように、冬は幼虫の姿で過ごします。公園などにあるクヌギやコナラの木の下を掘ってみれば、見つけられるかもしれません。
サナギの姿で越冬する生きものもいます。11月頃に庭で見つけたキアゲハの幼虫は、サナギになった後、羽化せずにそのまま冬を迎えました。4匹のキアゲハが春を待っているところです。
近所のお庭の木でミノムシも見つけました。枯れ葉を使ってなんとも芸術的なデザインのサナギです。
卵で越冬する生きものもいます。例えば、夏の間は庭の王者のように振る舞っていたカマキリは、秋の終わり頃までには死んでしまいます。メスは死ぬ前に卵を産みます。卵はそのまま越冬して、4~5月頃に赤ちゃんが産まれてきます。オオカマキリの卵は形もわかりやすく、目立つので、比較的見つけやすいです。枯れた木やススキやイネなどに卵を産みます。
カマキリの卵は種によって、形や産む場所が違います。ふたつの筋が見える場合は、チョウセンカマキリの卵です。一般的には枯れ木に産むようですが、向かいの家のお子さんがカマキリを捕まえたら、虫かごの中で産んだのだそうですよ。
さて、数は多くないようですが、成虫のまま越冬する虫もいます。我が家の庭や近所でも、いくつかの虫を観察することができました。
真冬に、ノースポールに止まっていたのはカメムシ。晴れの日とはいえ寒かったので、動きがとても鈍いですね。冬の間はじっと物陰に隠れていて、暖かければ少し行動して、という風に過ごしているようです。
畑の大根を抜いたら、クビキリギス(クビキリギリス)が一緒にピョーンと飛び出してきました。ほかのバッタの種はみんな死んでしまうそうですが、クビキリギスだけは成虫で越冬するのだそう。ダイコンの周りに雑草や野菜のくずを放置していたのですが、それらが枯れ草となり、そこで越冬していたようです。枯れ草がクビキリギスの冬の棲家になっていたのですね。役立ったようでとても嬉しいです。
成虫で越冬するからこそ、春になるといち早く鳴き出すのもクビキリギスです。ジーーという大声を聞いたことがあるかもしれません。庭にいると、うるさくて驚くほどの大声です。
越冬する成虫で、一番楽しませてもらったのはキタテハです。冬のある日、玄関近くの枯れ葉の吹き溜まりでカサカサと音がした気がして、よくよく見てみると、そこにキタテハがいたのでした。キタテハは羽を広げると鮮やかなオレンジ色なのですが、羽を閉じると枯れ葉そのもの!
タテハチョウの仲間は、羽のふちがギザギザしているのですが、なるほど枯れ葉に擬態するためでもあるのですね。ほとんどのチョウは冬までに死んでしまうか、サナギで越冬します。タテハチョウの多くが成虫で越冬するのは、擬態の技術を持っているからかもしれません。
息子と観察するうち、枯れ葉に乗せたら、枯れ葉に擬態するのでは?と思い立ち、実験してみることにしました。部屋の中はあたたかかったので、元気に動いていたのですが、枯れ葉を近づけたり、枯れ葉の上に乗せてみると、羽を閉じ、ぴたりと動かなくなりました! 周囲の枯れ葉を見て、本能的に擬態したのかもしれません。なんておもしろいのでしょう! その演技力にも感動してしまいました。
こうして挙げてみると、冬の生きものも見どころがたくさんあるものですね。皆さんのご近所にも、春を待つ生きものがいろいろな形で過ごしていると思います。ぜひ探して、観察してみてくださいね。
見つけやすさ | ★★★ |
飼いやすさ (戸外に放置) | ★★★★★ |
キタテハの演技力に 驚く度 | ★★★★★ |
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プロフィール
良原リエ
音楽家。アコーディオン、トイピアノ、トイ楽器の奏者として、Eテレ「いないいないばあっ!」の音楽をはじめ、映画やテレビ、他アーティストの楽曲などの演奏、制作に関わる。インテリア、庭づくり、ハンドメイド、リメイク、子育てなどライフスタイル全てが活動・表現の場になっており、親子、子ども向けのワークショップ、イベントプロデュースなども行っている。著書に「食べられる庭図鑑」「たのしい手づくり子そだて」「まいにちの子そだてべんとう」(アノニマ・スタジオ)「トイ楽器の本」(DU BOOKS)など多数。
instagram ID : rieaccordion
良原リエさんの本
食べられる庭図鑑
広い庭がなくても大丈夫! 小さな庭やベランダで始められる、家庭菜園や庭作りのアイデアをたっぷり紹介。「野菜」「ハーブ」「果樹」「雑草・野草」など、育てて楽しい、食べて美味しい植物88種と簡単なレシピを掲載。一年を通して自然に親しむ暮らしを提案します。アノニマ・スタジオWebサイトTOP > たのしい生きもの観察|もくじ > 第10回 冬の生きもの探し
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