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06 五山送り火に、思うこと。
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大文字山
①。お盆の締めくくり、五山送り火で、火が灯される五山のひとつが、「大文字」です。
ほかに、「
左大文字
②」「妙法
③」「鳥居形
④」「船形
⑤」があって、 8月16日の夜8時から順に点火されます。「今年はどこで見よう!?」と、友だちと誘い合ったり、 よく見える知人の家に集まったり、
ずっとどこかお祭りのような気分で見ていました。
見え方、感じ方が変わったのは、父が他界してから。
大切な人を失ってはじめてわかった、しみじみとありがたい、大事な行事です。
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夜も雰囲気があります
お盆は、お精霊さん=ご先祖さまの
霊が家に帰ってきます。
京都でも住んでいるエリアや宗派、
慣わしでそれぞれ違うと思いますが、
うちでは「六道まいり」でお盆がはじまります。
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冥土まで響いて、お精霊さんたちを迎えます
六道珍皇寺
⑥にお参りし、お精霊さんをお迎えにいくのが、「六道まいり」。
六道珍皇寺は、あの世とこの世の境目とされ、
お精霊さんはここから家に帰ってきはります。
お迎えの鐘をつき、
高野槙で水塔婆を浄め、お供えします。
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陶器まつりを同時開催。京都の窯元や若手作家が出店
早朝なのは、鐘をつくのにたくさん行列するからです。 当時に比べれば、お参りは少なくなっている気がしますが、 日が落ちて涼しくなった頃は順番待ちの長い列ができます。
「おかえり、迎えに来たよー」と、 心の中で話しかけながら、 ゴーンと一回、鐘をつきます。
今年もこうして来られてよかったなあ、 そう思うだけで泣きそうになるのは、年のせいでしょうか。
父の初盆では、初日にいそいそとお迎えにいったのが、
5年も経つとお迎えにいくのが都合で遅くなって、
「お父さん、早よ来てえなって言うてるやろなあ」なんて
母と笑っているのですから、人はたくましいなあと思います。
こうして悲しみを乗り越えて、人は生きていくんやな。
時が経って、わかることがあります。
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精進料理のお膳をお供えします。
それから、おだんご。
初日のお迎えだんご、最終日のお送りだんごは、
うちでは白玉でつくっています。
和菓子屋さんのはり紙によればこんな感じ。
8月13日はお迎えだんご、白餅(おけそくさん、ずっとお供えします)、蓮菓子、
14日はおはぎ、
15日は白むし(おこわ)、
16日はお送りだんご。
手間やけど、1年のわずか5日間のことなので、
楽しんでやっていると、ご先祖さまと過ごす時間は、あっというま。
そうして迎える、五山送り火。
父も、祖父母も、見てきた、送り火。
その火が今も絶えずにあること。
大切な人を失った悲しみが癒されるように、 毎年、人の手で火が灯されていること。
いろんな思いがこみ上げて、ありがたくて、胸がいっぱいになります。
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大文字は
銀閣寺
⑦の門前で、8月15日・16日に受け付けています。
なくなり次第終了になるのでお早めに。
奉納すると、送り火を見ていても、
思いが深まります。
また、送り火の消し炭は厄除のご利益があるとして、
翌朝、大文字山に拾いに登る人もあります。
さて、8月16日の夜8時になると点火、
おーっと見物客から歓声が上がります。
花火のような華やかさはない。
けれど、とても美しくて、圧倒的。
しばらくすると、静かに火が消えていきます。
「さよなら、またね、また来年」。
1年に1度、あらためて家族を思う、お盆。
どうぞ、よいお盆をお過ごしください。
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京のおやつ
ちべたさと甘さがじーんとしみいる、かき氷パトロール
ニュースになるくらい猛暑がつづく京都、このままでは旅行者が来なくなるのではと思うくらい、暑いです。暑気払いは、かき氷で。京都は名店ぞろいで、行列する店も少なくありません。この夏もあれこれ食べています。
はじめて食べた飴専門店、祗園小石の、わがまま氷(1)は、中にあんみつが隠れていて、二度おいしい。舞妓さんのあんみつが、店主と話している間に温くなったので、氷をのっけてあげたら、舞妓さんのあいだで評判となり、メニューになったそうです。わがままを言うてくれて、ありがとう。
1年に1回だけ登場するのが、「木と根」に大阪・八尾の「ダイドコ帖」が出張してつくる、枝豆のかき氷(2)。枝豆と氷、まさかの出会いですが、塩っけと枝豆の味がとてもいい。かき氷レボリューション、来年もやってほしい氷です。 大好きな梅香堂では、フルーツミルク氷(3)をはじめてチョイス、ここはマンゴーも黒糖も好きで悩ましい。丸久小山園のあずき京氷室(4)もからだにしみ入るおいしさでした。 信じられないけれど、夏本番はこれから! まだまだかき氷パトロールはつづきそうです。
著者プロフィール
宮下亜紀(みやした・あき)
京都に暮らす、編集者、ライター。
出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。「はじめまして京都」(共著)のほか、「イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由」(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、「絵本といっしょにまっすぐまっすぐ」(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)、「雑貨店おやつへようこそ 小さなお店のつくり方つづけ方」(トノイケミキ著、西日本出版社)など、京都の暮らしから芽生えた書籍や雑誌の編集を手がける。
www.instagram.com/miyanlife/
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