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08 お茶から京都がもっと好きになる。


茶の湯は敷居が高い。
そんなイメージがありますが、本当にその通り。
茶の湯は敷居が高いもの。だからよいのです。
日常と非日常の線引きがあって、心も身体もしゃんとする。
別世界へ行くのが楽しいのです。


春のお茶席でいただいた一服。お菓子も春の色
お茶にゆかりの深い寺院へ
取材にうかがったときのことです。
まずは、お茶を一服どうぞと
ご住職が一人一人に点ててくださいました。
慣れない場に緊張し、段取りばかり気にしていた
私たちの、時の流れが変わりました。
ゆったりと、けれど、凛とした雰囲気の中
ご住職は何事も率直に話してくださり、
「取材をされる方ならば
   お茶を知っておくとよいですよ」と
おっしゃったのでした。


白川あかり茶の湯会のお茶室
この言葉はずっと私の中に残り、
何年かしてようやっと
お茶のお稽古に通い始めました。
友人を通して先生と出会い、
90歳で引退されるまで3年ほど、
月2、3回のお稽古に通いました。
茶花を庭で育て、日々見聞を広め、
年老いてなお知的で美しい先生。
せわしない日々の中で、ぶれてしまった軸を整える。
お稽古はそんな時間。
通った期間は短いですが、大げさでなく
人生を変えるほどの、大事な時間になりました。


言葉を楽しみながら一服いただく。お道具の拝見も楽しみ
仕事柄もありますが、
何でもアタマで解釈しようとする質で
手で覚えることが苦手。
なかなか手もとがおぼつかないのですが、
それでもあるとき、無心ですっと身体が動きました。
身につくとはこういうことなんや。
お点前は無駄がない、究められた動きなんや。
知識でなく、自分自身の感覚で、合点がいきました。
季節の花に目がとまる。
きものが着てみたくなる。
振る舞いにちょっと気遣う。
日本の美しいものと、茶の湯はつながっている。
茶の湯のおかげでものを見る目が変わり、
それまで以上に、
京都の美しさにも気づけるようになりました。



中国茶の茶席も素敵です
その後、お稽古に通えないまま時が経っていますが、
お茶の時間が持ちたくて
機会があれば、茶会や茶席にうかがいます。
まわりで中国茶を楽しむ方が多くて、
中国茶の茶会も楽しい。
そのときどきの季節や思いを込めて
しつらえ、もてなす。
大事なところは通じ合っていると思います。
作法を知っていなくても、
この場を開いてくださった方への
感謝の気持ちがあれば、大丈夫。
だけど、知っていると、もっと楽しい。


美しい竹の茶室
この間うかがった、白川あかり茶の湯会では、

白川

につくられた川床のお茶室で
一服いただきました。
せせらぎと虫の音に包まれて、
とても贅沢なひとときでした。
茶室は美大生がつくったもので、
だれでも気軽に参加できました。
こんな広く開かれた催しはうれしい。

泉屋博古館せんおくはくこかん

のイベントにて、
竹の茶室「帰庵」でいただいた一服も
とても印象的でした。
竹でつくられたシンプル極まりない茶室。
外から丸見えなのに中に入ると、
外とくっきり線引きされた、別世界。
景色がすべて、中にいる人たちだけのものになって、
一体感が生まれる。
茶室のすごさを実感しました。


吉田山大茶会で、トラックの荷台を茶席に!
新茶の季節に

吉田神社

の境内で開催される、
吉田山大茶会は、日本茶、中国茶など、
さまざまなお茶が集まり、
お茶席も出ておすすめです。

寺院では茶室が見学できるところもあります。

大西清右衛門せいえもん美術館

ではなかなかじっくり見られない茶の湯釜の魅力を堪能できます。

北村美術館

四君子苑しくんしえん」の茶室も素晴らしいです。

京都御苑にある拾翠亭しゅうすいてい

や岡崎の

無燐菴むりんあん


旧三井家下鴨別邸

など、
実は茶会のために借りることができる名所もあります。


お茶の楽しみは尽きません。
お茶に親しめばきっと京都がもっと魅力的に見えてきます。


京のおやつ


今年も“栗様”のお出ましです!
栗の季節がやって来ました。“くり餅”ののぼりを見つけて、自分と同じように待ちわびる人がいるんだなと思います。栗様と呼びたいほど、栗は愛おしい、秋の贅沢。和菓子にも、洋菓子にも、栗様。和洋中なんでも、お菓子にも、料理にも使われて、丸ごとでも、くだいても、漉してもいい。おいしくて応用が利く、なんて素晴らしい食材でしょう。選択肢の多さが悩ましくもうれしい。
毎年楽しみにしているのは「くりや」の栗おはぎ(1)。栗専門の和菓子店が、栗の季節にだけつくっています。粒あんに変わって、なめらかな栗あんで包んだ、シンプルで贅沢なおはぎです。「月餅屋直正」の栗蒸し(2)は、栗の羊羹と蒸しパン風の生地がひとつになって、かわいくてほっこりします。お饅頭もお赤飯(3)も栗が入るとますますおいしそうだし、モンブランも食べたいし……、栗の追っかけがつづきます。

著者プロフィール

宮下亜紀(みやした・あき)

京都に暮らす、編集者、ライター。
出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。「はじめまして京都」(共著)のほか、「イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由」(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、「絵本といっしょにまっすぐまっすぐ」(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)、「雑貨店おやつへようこそ 小さなお店のつくり方つづけ方」(トノイケミキ著、西日本出版社)など、京都の暮らしから芽生えた書籍や雑誌の編集を手がける。
www.instagram.com/miyanlife/


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