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09 京都で、愛され続けるお店。
京都はここ数年、人気が高まり、新しい店がどんどんできます。
それと引き換えるように、なくなっていく店もあります。
すっと静かに、店先のはり紙だけで店を閉じてしまう。
お客様への手紙のような、閉店のお知らせ。
これまでのようにできない。誠実に仕事をされているからこそ、潔く、決断されるのかなと思います。
「今、行くべきお店はどこですか?」と、仕事柄、よく聞かれます。
新しいお店も素敵。けれど、長く淡々と続いているお店にも、ぜひ足を運んでほしいなと思います。
TVや雑誌で取り上げられるような、
派手さはなくとも、常連さんから愛されるお店。
地元の人に信頼されていて、
あたりまえにていねいに、日々仕事を続けてはる。
たとえば、注文を聞いてから仕上げる。
どこから見てもきれいに場を整える。
季節のしつらえをする。ちょっとした心遣い。
暮らしの中で、仕事するうえで、
大事なことに気づかせてもらうことがあります。
京都で愛され続けるコーヒーショップのひとつが、
地元の人からも、旅行者からも、人気のお店です。
イノダコーヒ創業者の甥っ子で、
戦後間もない開業当初から働き始め、
今年86歳を迎えられたアキオさんの話を
聞き書きされていた方と出会い、
アノニマ・スタジオにて『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』という本をつくりました。
アキオさんはイノダコーヒを
引退されてから、20年。
その後もコーヒーの淹れ方教室や
講演会で活躍されてきましたが、
それにしても今なお、
アキオファンがたくさんいらっしゃいます。
なんでそんなにも愛されてはるんやろ。
現役時代を知らない私には驚きで、
だからこそ、その理由が知りたい、
伝えたいと思いました。
京都を訪れて、イノダコーヒでひと心地つかれたことのある方は少なくないと思います。
三条店は
大きな円形カウンターで知られます。
コーヒーを淹れ、サンドイッチなども作る、
オープンキッチン。
三条店ができたのは昭和45(1970)年、
大阪万博の年ですから、
時代の最先端だったと想像します。
円形カウンターはぐるりと360°、
どこからでもお客さんに見られる。
カウンターに立つ人は気が抜けません。
プレッシャーがかかるこの場所で、アキオさんはコーヒーを淹れ、ファンをつくってきました。
アキオさんがカウンターで続けてきたこと、
たとえば、「いつも笑顔でいること」。
カウンターで何か起これば一大事。
いつも笑顔でいれば、打ち解けてくださる。
いい関係でいれば何か起こっても大事に至らない。
「清潔にすること」。
気づいたらさっと拭いて、いつもきれいにする。
コーヒーを淹れるときは、場を整える。
「ご縁を大切にする」。
よいご縁はまた次のご縁につながっていく。
家族や友だちを連れて、また来てくださる……。
アキオさんから教えてもらったことは、
どの仕事にも通じるもの。
決して、特別なことではなく、
だれにでもできること。
だからすとんと心に入ります。
イノダコーヒ出身で、アキオさんと縁が深い、
本では取材させてもらいましたが、
どちらのお店も気持ちを受け継ぎ、
世代を越えて愛されています。
受け継ぐということは、代を継ぐというだけではない。
気づいたこと、学んだことを、自分の人生で生かすことも、受け継ぐということ。
京都は長く愛され続けるものと出会える町。
とはいえ、いつまでもそれがあるとは限りません。
心惹かれる場所、行ってみたいお店があれば足を運んで、そこに息づくものをぜひ感じ取ってください。
イノダコーヒのスイーツ
イノダコーヒには、コーヒーと一緒に楽しみたい、魅力的なスイーツがたくさんあります。チーズケーキ、ジャンボシュークリーム、アップルパイ……。クラシックだけれど、ちゃんとオリジナリティがあって、ここでしか味わえない。ラム酒が利いた、チョコレートケーキ、ラムロックはアキオさんもお気に入りです。三条店のカウンターで、ぜひどうぞ。
それと引き換えるように、なくなっていく店もあります。
すっと静かに、店先のはり紙だけで店を閉じてしまう。
お客様への手紙のような、閉店のお知らせ。
これまでのようにできない。誠実に仕事をされているからこそ、潔く、決断されるのかなと思います。
「今、行くべきお店はどこですか?」と、仕事柄、よく聞かれます。
新しいお店も素敵。けれど、長く淡々と続いているお店にも、ぜひ足を運んでほしいなと思います。
TVや雑誌で取り上げられるような、
派手さはなくとも、常連さんから愛されるお店。
地元の人に信頼されていて、
あたりまえにていねいに、日々仕事を続けてはる。
たとえば、注文を聞いてから仕上げる。
どこから見てもきれいに場を整える。
季節のしつらえをする。ちょっとした心遣い。
暮らしの中で、仕事するうえで、
大事なことに気づかせてもらうことがあります。
京都で愛され続けるコーヒーショップのひとつが、
イノダコーヒ
①〜⑧。地元の人からも、旅行者からも、人気のお店です。
イノダコーヒ創業者の甥っ子で、
戦後間もない開業当初から働き始め、
三条店
①の初代店長を務めた、猪田彰郎さん。今年86歳を迎えられたアキオさんの話を
聞き書きされていた方と出会い、
アノニマ・スタジオにて『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』という本をつくりました。
アキオさんはイノダコーヒを
引退されてから、20年。
その後もコーヒーの淹れ方教室や
講演会で活躍されてきましたが、
それにしても今なお、
アキオファンがたくさんいらっしゃいます。
なんでそんなにも愛されてはるんやろ。
現役時代を知らない私には驚きで、
だからこそ、その理由が知りたい、
伝えたいと思いました。
京都を訪れて、イノダコーヒでひと心地つかれたことのある方は少なくないと思います。
三条店は
本店
②からすぐ、三条通に面していて、大きな円形カウンターで知られます。
コーヒーを淹れ、サンドイッチなども作る、
オープンキッチン。
三条店ができたのは昭和45(1970)年、
大阪万博の年ですから、
時代の最先端だったと想像します。
円形カウンターはぐるりと360°、
どこからでもお客さんに見られる。
カウンターに立つ人は気が抜けません。
プレッシャーがかかるこの場所で、アキオさんはコーヒーを淹れ、ファンをつくってきました。
アキオさんがカウンターで続けてきたこと、
たとえば、「いつも笑顔でいること」。
カウンターで何か起これば一大事。
いつも笑顔でいれば、打ち解けてくださる。
いい関係でいれば何か起こっても大事に至らない。
「清潔にすること」。
気づいたらさっと拭いて、いつもきれいにする。
コーヒーを淹れるときは、場を整える。
「ご縁を大切にする」。
よいご縁はまた次のご縁につながっていく。
家族や友だちを連れて、また来てくださる……。
アキオさんから教えてもらったことは、
どの仕事にも通じるもの。
決して、特別なことではなく、
だれにでもできること。
だからすとんと心に入ります。
イノダコーヒ出身で、アキオさんと縁が深い、
はしもと珈琲
⑨さん、市川屋珈琲
⑩さんも本では取材させてもらいましたが、
どちらのお店も気持ちを受け継ぎ、
世代を越えて愛されています。
受け継ぐということは、代を継ぐというだけではない。
気づいたこと、学んだことを、自分の人生で生かすことも、受け継ぐということ。
京都は長く愛され続けるものと出会える町。
とはいえ、いつまでもそれがあるとは限りません。
心惹かれる場所、行ってみたいお店があれば足を運んで、そこに息づくものをぜひ感じ取ってください。
京のおやつ
イノダコーヒのスイーツ
イノダコーヒには、コーヒーと一緒に楽しみたい、魅力的なスイーツがたくさんあります。チーズケーキ、ジャンボシュークリーム、アップルパイ……。クラシックだけれど、ちゃんとオリジナリティがあって、ここでしか味わえない。ラム酒が利いた、チョコレートケーキ、ラムロックはアキオさんもお気に入りです。三条店のカウンターで、ぜひどうぞ。
著者プロフィール
宮下亜紀(みやした・あき)
京都に暮らす、編集者、ライター。
出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。「はじめまして京都」(共著)のほか、「イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由」(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、「絵本といっしょにまっすぐまっすぐ」(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)、「雑貨店おやつへようこそ 小さなお店のつくり方つづけ方」(トノイケミキ著、西日本出版社)など、京都の暮らしから芽生えた書籍や雑誌の編集を手がける。
www.instagram.com/miyanlife/
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