11 鬼様に会いに節分祭へ。


節分祭の舞妓さんの豆まき
立春の前日は、節分。
私が一年で最も好きな行事です。
1月はどんな一年を過ごそうかと思いをめぐらし、 節分を迎えて、春が来る。
新しいスタートという気がする、大切な節目です。

節分の日はなるべく用事を入れないようにして
“節活”に捧げるのが、毎年恒例。
京都では

吉田神社

が有名ですが、 あちこちの寺社で節分祭があっていつもはしごします。

鬼と遭遇できたり、このときだけのお守りがあったり……、 ただ見物するだけではない、節分は参加型エンターテイメント。 だれにも開かれている、大らかさがあって大好きです。

 
なんと言っても楽しみなのが、鬼の追っかけ。
節分祭に出没する、鬼様は私のアイドル。 一年に一度、この世にやって来る、ロックスターみたいな存在です。 ゆるキャラやヒーローであふれる現代ですが、ファンタジー界の元祖、鬼様の格好良さや愛嬌にしびれます。運良く遭遇できるとうれしくてにやにやしてしまいます。

吉田神社の追儺式
節分の「追儺式ついなしき」とは、そもそも平安時代に始まった宮中の年中行事で、疫鬼えききを追い払う儀式。
「鬼やらい」とも呼ばれます。
疫鬼とは、疫病を引き起こして人々を苦しめる、疫病神のこと。京都の表鬼門にあたる、吉田神社では節分の日の前夜、追儺式が行われます。
金色の四つ目をもつ方相氏ほうそうしが鬼たちを一所に追いつめ、殿上人てんじょうびとが弓矢で追い払います。
雄叫びを上げていた鬼が邪気を抜かれて、よろよろと帰っていく姿もおもしろくて、憎めません。

鬼様逢いたさに詰めかけたファンで毎年いっぱい。
近づいてくる鬼に思わず泣き出す子どももいて、 時代は変わってもやっぱり異界の存在なんやなあって、ほほえましくてうれしいのです。

吉田神社の福豆はくじ引き付き
屋台もたくさん出て、年越しそばや地元の酒蔵の出店もあって、寒い中、そぞろ歩くのが楽しい。
節分の日の夜、午後11時、参拝者が納めた古い神札を燃やす、火炉祭かろさいも遅い時間なのに大勢の人が見守ります。

私が“節活”に目覚めたのは、吉田神社のおかげ。
周辺にも節分祭の楽しみがあって、私はまず

熊野神社

からお参りし、山伏の寺院である

聖護院門跡

須賀神社

、それから吉田神社まで、歩いてめぐるのがお気に入りです。

須賀神社の懸想文売り
須賀神社で節分祭だけ授与されるお守り「懸想文けそうぶみ」は良縁にご利益があると密かに人気です。
懸想文とは、思い人への恋文。白い覆面で顔を隠した、境内にいる怪しげな2人組は、懸想文売り。 恋文の代筆をして、ご縁を結んできた2人から、お守りを授かります。
顔を隠しているのは、貴族がこっそりと庶民の恋文の代筆業をしていたからとか。 このお守りは、人に知られないように、たんすや鏡台の中にしまいます。
胸に秘めた恋心が叶うように、ぜひこっそりと懸想文売りから手に入れてください。

壬生寺ではほうらくを奉納
鬼に逢いたければ、

廬山寺ろざんじ

の鬼法楽へ。
人出はとても多いですが、松明を手に踊る鬼たちがチャーミングで、毎年会いたいと思うのです。
京都の四方を守る、4つの社寺をめぐる「四方詣よもまいり」という風習もあります。 御所の表鬼門(北東)・吉田神社、裏鬼門(南西)・

壬生寺みぶでら

、南東・

八坂神社

または

伏見稲荷大社

、北西・

北野天満宮

です。
壬生寺は、厄除ほうらくの奉納や壬生狂言があって大いににぎわいます。
八坂神社、北野天満宮では、舞妓さん、芸妓さんによる豆まきが華やかです。
寺社それぞれで節分の豆の授与もあります。
これまたデザインがそれぞれかわいくて、ついつい集めたくなります。

家に帰ったら豆まきをして、一年の厄除祈願。
清らかな気持ちで、春のはじまりです!



京のおやつ


お福分けしたい、節分の福豆
節分祭では、福豆を授かるのも楽しみです。パッケージもそれぞれ、素朴でかわいくて、つい買い過ぎます。私のお気に入りは、廬山寺の蓬莱豆。紅白のお砂糖でお豆がコーディングされていて、大粒の金平糖みたいなかたち。甘くて香ばしくて、カリカリッとおいしいんです。筒状の紙にざらざらっと入っている、シンプルな包み方も大好き。多めに買って、友だちにもお福分けします。

著者プロフィール

宮下亜紀(みやした・あき)

京都に暮らす、編集者、ライター。
出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。「はじめまして京都」(共著)のほか、「イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由」(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、「絵本といっしょにまっすぐまっすぐ」(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)、「雑貨店おやつへようこそ 小さなお店のつくり方つづけ方」(トノイケミキ著、西日本出版社)など、京都の暮らしから芽生えた書籍や雑誌の編集を手がける。
www.instagram.com/miyanlife/


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