気が付けば、このスピンオフ連載も20回目になりました。隔週更新の連載を楽しみにしてくださっている皆様、いつもご覧頂きありがとうございます。
出来れば全作品ご紹介したいところですが、それだと本を購入してくださった方にあまりにも申し訳ないので、キリが良い今回で一旦終わりとさせていただきます。この連載を通じて他のレシピが気になった方は、是非書店へ足を運ばれて他のメニューをご覧ください(願わくば、そのままお買い上げの運びになりますと、レシピ訳者としてはとても嬉しく…)。
最終回は日本のクリスマスシーズンにぴったりのローストチキンをご紹介します。いきなり出鼻をくじきますが、アメリカ同様、イギリスでもクリスマスにローストチキンは登場しません。では何がメインかというと、ターキー(七面鳥)やグース(カナダ雁)などのローストです。でもこれらの丸ごと一羽は日本では入手困難で高級品、かつ日本の家庭用オーブンに入らない場合が多いですよね。なので、雰囲気そのままでコンパクトにした日本バージョンとして、先達が非日常感のある丸鶏で代用し、それが定着したのではないかと考えられます。
メアリーのレシピのローストチキンは、塩、コショウ、パセリ、レモンと日本でも無理せずに手に入るものばかり。バターは使わないのでさっぱり味に仕上がります。塩の量が適量となっているのでどの位使ってよいのか分からない場合は、指定の鶏の大きさで小さじ1+1/3程度を目安にしてください(レモン果汁をかける前に小さじ1、最後にふりかける分量が小さじ1/3位です)。
本来は、持ち手がついた深い天パンに網を敷くロースターという物を使いますが、写真のように普通サイズの天パンに網を乗せるだけでもちゃんと作れます。網を使って背中側に隙間を作ると全体に熱が回るので、丸ごとの鶏でもムラ無く焼けます。日本のオーブン(特にオーブンレンジ)は指定温度で焼いても色づきが悪いことがあるので、気になる場合は様子を見ながら10~15分焼き時間を延長してください。その最中、胸肉だけ焦げそうになった時は、胸肉の大きさに合わせたアルミホイルを被せると良いですよ。
最後に食品用の温度計を使って腿肉の内側の温度を測ります。その際の目安温度は75℃です。お持ちでなければ、先端が細い小さな包丁や竹串を使って同じ部位に刺し、透明の肉汁が出れば大丈夫。特に解凍品を使う場合は、このチェックを忘れずに(見た目は解凍できていても、腿肉の芯が凍っていることがあるのです)。
美味しいローストチキンが出来ますように。ではまた、どこかでお会いしましょう。


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読んで、作って、楽しめるメアリー・ポピンズの世界

台所のメアリー・ポピンズ
おはなしとお料理ノート

作:P.L.トラヴァース
絵:メアリー・シェパード
おはなし訳:小宮由
お料理訳:アンダーソン夏代
本体価格1600円(税別)

「メアリー・ポピンズ」という名前を、聞いたことはあるけれど、お話は読んだことがない、という方もいらっしゃるかもしれません。児童文学の定番であり、多くの読者が世界中にいるシリーズの主人公です。この本には、ファンの方であればより楽しめ、はじめて出会う人には「入門」になるようなお話の世界が1週間分に凝縮されています。そして一番の特徴は、メアリー・ポピンズのお料理ノート。子どもだけで出来る簡単なメニューから、大人もはじめて挑戦するようなイギリスの伝統料理、読むだけでもいろんな想像が膨らむレシピをお楽しみください。


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