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雪あそび

Q. スキーを楽しむ秘訣は?
A. 「失敗を恐れず」、「自分で考える」こと!
 子どもたちにとってのスキーの意義は、登山の回と同じく「大冒険、そして自己責任」だということだ。足元は簡単に滑ってしまうし、思わぬスピードが出てしまうこともある。そして斜面の上部に立って「えっ?こんな急斜面を降りるの?」と感じたことも、経験者なら一度や二度ではないはず。まずは、足元が簡単に滑ってしまうという非日常を楽しんで欲しい。この非日常を楽しむには、斜面では「転んだらすぐに起き上がる」とか、ある程度転ぶことも覚悟して「多少の痛い目にも合わないといけない」とか、リフトで上ってしまえば「泣こうが喚こうがだれも助けてくれない」とか、まるで人生訓のような覚悟と準備と練習が必要だ。もちろん怪我なくというのが大前提だが、これらをひっくるめて「失敗することを恐れず」楽しめる、そして「自分で考えて」楽しみを見つけることが出来る、というのがスキーのなによりの魅力だ。子どもと一緒にスキーに行くたびに、本当に「スキーは子育てにいいね!」と思う。スキーやスノーボードを通じて子どもは一回りも二回りも大きく成長していく。

Q. スキー場はどんなところを選ぶといいの?
A. 緩斜面が多い、小規模のスキー場がベスト
 子どものレベルに合わせ、緩斜面が多いスキー場を選ぼう。さらに「そり遊びコース」が設置されていたりすれば、子ども向きのスキー場と考えていい。
 またスキー場の「規模」も大きな選定ポイントだ。3年ほど前になるが、上信越地方のわりと大きな規模の、コース数で言うと15以上あるスキー場を訪れた時のこと。ぼくと当時1歳の娘がレストハウスで待機、妻と上の子2人(当時小2、年長)が滑りに出たのだが、2時間たっても帰ってこない。泣きじゃくる娘を抱きかかえぼくは途方に暮れてしまった。ところが幸いにしてたまたま隣の席のグループの方々が、娘を抱っこしあやしてくれたのだ。妻と子たちは、途中でトイレに行きたくなったがコースが広くて右往左往し、なかなかレストハウスに辿りつけなかったとのことだった。実はウチの子をあやしてくれたのは保育士さんのグループで、「私たちプロなんです。お父さん、やっぱり初めてのお子さんって大変ですね〜笑」と言われ、「いや…実は3人目の子どもなんです…はははは…」と弁解をするというオチまでついた。2時間程度も自分の娘をあやせないのかというご批判は別の機会に受け付けるとして、こういったことが起こらないように、コース数が2〜3本程度の小規模のスキー場からスタートするのがベストだろう。

Q. スケジュールのポイントは?
● 朝イチがおすすめ
 家族でスキーやスノーボードを楽しむとなれば車での移動が基本になると思う。そうなるとやはり駐車場の混み具合が気になるところ。混雑を考え駐車場のオープンやリフトの始発を目指し、逆算して行動しよう。朝イチだとゲレンデも空いている。オープン直後のゲレンデは状態もよく、爽快な滑走は違いなしだ。ただし道中の凍結を考え、スタッドレスタイヤまたは滑り止めのチェーン装着を忘れずに。そしてお昼ごはんを10時から11時ごろに取ることができれば、これまた混雑前の時間で済ませることが出来る。

●注意する時間帯
 一般的にゲレンデでの事故が多いのは「好天、緩斜面、午後2時」と言われている。ちょうど集中力が切れてくる時間帯だ。この時間帯はこまめに子どもを観察し声を掛け休憩を取るようにしよう。また、チョコレートや飴玉をポケットに忍ばせておくといい。ゲレンデの隅っこで口に入れるだけで集中力と元気が戻ってくる。この時間帯に思い切って長い休憩を取ったり、もうこの時間でスキーを終える、というくらいでいいかもしれない。

Q. スキー・雪遊びの装備は?
●ウェア
 我が家では、親子とも防水浸透性のレインウェアを一年中着回している(キャンプ・登山でも使用)。防風性は高く保温性は低いという特徴があるが、中にセーターやフリースを着込めばいい。雪遊びをしても雪洞を掘っても中までは濡れないという、保温性を補って余りある使い勝手の良さが魅力。
 あとウェアで必須なのは、足首に付ける雪よけ足カバー。スキーの時にはさほど心配はないが、スキー板を外してちょっと雪遊び、となるととたんに雪が靴の中に入ってしまう。それを防止するために足カバーは必須だ。

●手袋
 未就園児までは、自分で装着できるミトンタイプがいい(ちなみに我が家では小学校に上がってからもミトンタイプ)。雪遊び(雪だるまを作ったり雪合戦したり)が主体なら、予備の手袋を持つようにしたい。また手袋に紐をつけウェアの中に通しておくと、紛失しなくていい。

●ニットキャップとゴーグル
 頭部の保温のためのニットキャップ、雪目と目のケガ防止のためのゴーグルも必須装備だ。ニットキャップなし、ゴーグルの替わりにサングラス、というのは危険極まりない。今流行りのヘルメットも頭部保護のため悪くはないが、少々重たいのが難点。

●スキーブーツ
 購入しても良いし、レンタルでもいい。購入となると、経済的な理由から、出来るだけ長く履ける大きめのサイズを選ぶと思う。そうするとその時点では足に合わない。どうするか?インナーブーツとアウターシェル(プラスティック)の間に一枚運動靴などの中敷きを入れてみよう。足が大きくなってくればこれを取り除いてジャストサイズで履くといい。随分と長い期間、一足のブーツを履くことが可能になる。

●ストック
 子どもは手になにか持つと、途端に上半身が緊張してしまう。これが上手く滑れない原因となる。ギューっとストックを握りしめ、腕が縮こまり、後傾になってコントロールが効かずに滑っている子どもをよく見かける。小学校高学年まではストックは必要ないだろう。

●スキー板
 身長からマイナス20cmくらいまでは十分使える。兄弟がいると使いまわせる。

Q. 何歳から楽しめる?
A. 3歳半から4歳くらい
 子ども3人で実際に試してみたことなのだが「金属のエッジの付いていない、プラスティックだけの板(と長靴)」では、せいぜい平地を歩くくらいが限界だった。斜面を滑ったり停まったりしようと思うと「金属のエッジのついたスキー板」が必要になってくる。その金属エッジ付きのスキー板とプラスティックブーツを履いて遊べる年齢となると、脚力的に3歳半から4歳がスタートとなる。それまではそり遊びや雪だるま作りで雪に慣れておくといいだろう。



Q. スキーに慣れるには?ー慣らし方と教え方
 まず平地でスケーティング(自分の力で推進すること)に慣れよう。そのためには鬼ごっこや駆けっこが効果的だ。いきなり両足にスキーを履いてしまうと難しいので、片足ずつ履いて慣れていくことがポイント。  また以下の2つのことを身につけると上達が早い。
1)止まり方
 これは緩斜面で練習する。両足の内エッジを角付けした止まり方(いわゆる「ハ」の字での止まり方)をマスターしよう。スキー板のテール部分はどれだけ開いてもいい。止まれればいいのだから。力いっぱい「ハの字」でスキー板を開き、止まれるまで何度も練習する。
2)転び方
 これは平地でよい。スピードが出すぎた時などに有効だ。横に倒れるように転び方と起き上がり方を学ぼう。  そして最後に、まわりをよく見ること。特に滑りだす際などにまわりの安全はどうか確かめること、これも早い段階で癖づけておきたい。

 さらに、親が子どもを教える時にちょっと気になることを。
 最近、親がリュックサックやポーチを身に付けたまま、子どもに教えている様子をよく見かける。子どもは親の滑りを真似をする天才だが、何かを背負っていると、真似をしにくくなるのだ。子どもは文字通り、親の背中を見て上達する。いろいろなモノを持ってこないといけないことも分からなくもないが、ここはひとつリュックサックは下ろして、背中を見せてあげよう。
 お父さんやお母さんがスキー初心者の場合、家族での冬の遊びとして、スキーが選択肢に上がることは少ないかもしれない。ただ、間違いなく言えるのは、子どもがスキー技術を身につけようとする時、例外なく大人たちよりも上達は早い。身体の柔軟性があるのと、スピードに対しての恐怖心が少ないからだ(もちろん例外もある)。
 だから仮にお父さんがスキー初心者だとしても、子どもと一緒に十分楽しめると思う。同じレベルで習い始めた子どものほうがいつの間にか上手くなっていた、ということもよくある。
 冬、山の美しさは格別だ。ピンと張り詰めた空気、刻々と変化する雪の様子。水蒸気と風が作る霧氷の素晴らしさ。風の造形美である「エビのしっぽ(横向きの氷柱)」、そして樹氷たち。スキーだけにこだわらず、こういった冬の山を体験するだけでもわざわざ出かけていく価値はある。この冬、ぜひ子どもたちと、あの白銀の嶺々へ!


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