<< 前 目次 次 >>
カバーのパラフィン紙が裾の所、ちょっと破けている。 焼けは僅かで、開くと活版印刷の文字と余白が何とも清々しい。 持主はこの世を去ったのだろう。北側の本棚で眠っていた本たちは、 この、感じのよい本屋に引き取られ200円の籠の中。 身勝手なストーリーが出来あがって読むつもりの無い本を買う。
レジには男の人が一人いて「200円です」と言うと、 昔ながらの薄くて白い紙袋を右手に、左手に本を持って、慎重にぴっちりと入れてくれる。 その仕草ひとつで充実した気分になる。私なら、入れるときにパラフィン紙を破いてる! 岩波文庫は1981年3月まで価格を100ページ当たりの単価を決めて☆で表示していたそう。 538頁あるこの本は★★★★★。