イダルゴ神父の階段へ向かいかけて、思い直して
警備員なのか警官なのか、彼女に聞いてみる。
「写真を撮らせてもらえませんか?」
「私の?」
「そう、あなたの。」
ちょっと驚いた顔をしたあと「いいわ」
彼女はそう言って背筋をぴんとのばしてまっすぐとレンズを見た。
その、まっすぐとした佇まいに、私はまたもたじろいで
シャッターを押すタイミングのことを忘れた。
もう1回!
野暮なことは言わないで
「ありがとうございました」と頭を下げた。
すると彼女はバリの人の挨拶みたいに両の手を合わせて
「アリイグァト? アリガトゥー」と言って
ちょこんと頭を下げて、下げるけど目は私から
すこしもそらさないで笑った。
とびっきりの、瞼にやきついちゃう程の笑顔。