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<2階の回廊で>
警備員なのか、警官なのか。彼女の腰にも小さな銃がある。
私の眼は自然と彼女の腰に銃があることを確認している。
小さな驚き。
歴代の偉い人、ここは州庁舎だから州知事かな、肖像画の部屋に迷い込む。
警備員のような警官のような彼女は2階の案内人でもあるようで、
何か説明してくれようとするので「すみません、スペイン語、わからないの」と恐縮して言う。
「あー、何も問題はないわ、私にはスペイン語しか話すことが出来ないから、
説明してあげられなくて残念だけど、どうぞゆっくり見ていってね」
彼女がそういうので、興味のない肖像画を一生懸命見ているふりをする。
必要ないんだけどね。そんなサービス精神。
だけど、彼女ったら笑顔が素敵だし、私はもう、この街に
朝一番からすっかりほだされちゃったから、
気分がいいから、サービスしないではいられないのだ。

州庁舎にはぽつりぽつりと
彼女が丁寧な仕事をするのに差し支えが無い程度に観光客がやってくる。
ほっとして部屋をあとにしてバルコニーから見下ろす景色をスケッチ
景色っていうか、口笛のおじさん。
なんて素敵なパティオだろう。





                        

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