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ナンダロウ?のナン、くらいのところで気がついた。
その、四角い箱は小さな棺だった。
高校生くらいだろうか。6人の男の子が懸命に掲げ運ぶ。

なんて事をしているんだろう。恥ずかしさでみるみる青くなる。
相方さんがカメラを下げて帽子を脱いだのが右目の端っこに見えた。

その後を思い思いの花や風船を手に歩く小学生くらいの子供たち、中学生、高校生。
そして、多分、その、親たち。

鼓笛隊の演奏は数小節の短い曲、ただ1曲だった。
それを繰り返しながらサンフランシスコ通りを進んでいく。
同じ太鼓とラッパの音なのにもう、さっきのようには聞えない。

街の中心のソカロの辺りで
葬列だとわかって携帯写真を撮っている中年の男たちが増えた。
蹴飛ばしてやりたい。

列はしだいに長くなる。
街には信号が無いので主な十字路には警察官が出て交通整理をしている。
棺が前に来ると、帽子を取って胸にあて、通り過ぎるまで動かない。
最後尾にはバイクの警察官がついて列に加わる人を誘導している。
警察官には時折知り合いが近づいてきて握手の挨拶。
二言三言言葉を交わして立ち去ってゆく。

野次馬も含めて町中で見送った。
空まで曇ってしまった。


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