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「今朝、川崎を出てきたんです」
「ありや、カワサキ?」
「はい。ちょっと、お腹すいちゃって。どこか、ご飯食べられるところ、ありますか?」

 カチャっ

   と音がして、静かに聞いてくれていたおじさんにスイッチがはいった。
   「ほな、ほな、なな、こっち、こっち」
      足早に設置されている寺の見取り図へ促される。

   「この階段を降りてな、ずーっと、ずっと行ってな、サンヨーデンシャの踏切の手前な、
    右やぁ! 右、ちょっと入ったとこになぁ、シラハマズシっちゃーお寿司やさんがあんねん。
    そこ、行きな。左っちゃう、右やで! シラハマズシやで!」

        さて、また適当な書き方をしている。
        須磨の人が読んだらきっと怒っちゃいますね。
                         おい、土佐弁もどき入ってないか?
                  土佐の人にも怒られる。
             もとい。

     こちらとしては昼から寿司を食べるつもりは全然なかった。
     でも、おっちゃんが楽しそうに言うのである。

「ここの寿司はなぁ〜〜、ニッポンいっちゃ〜〜ニッポンいちやでぇえええ〜〜」

    腹の底から湧き出た声が駐車場の向かいの山にぶつかって反射。
       こだまとなって食いしん坊心を直撃したのだった。
            考える間もなくこの口が「ありがとうございます! 行ってきま〜す。」と言っていた。


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