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肩の力がきゅーっと抜けていくのを感じる。
すごく緊張していたみたい。



駅が近づくと
おばさんは襟のボタンをひとつ外して胸元に手をいれた。
ブラウスの襟にはレースの飾りがついている。淡いピンク色。
すすけているけれどアイロンがあててある。
胸元から引き戻した手のひらには小さな布のお財布。
お金を出すともとにもどし、ボタンをしめた。

   そんな所にお財布を入れていたら、命にかかわりはしないかと思う。
     おばさんは切実にお金を盗まれるわけにはいかないのだろうと思う。



電車が止まると近くにいる人に彼女は何かを聞いた。
聞かれた人が「そうですよ」と答えている。
私のことなんてすっかり眼中になく足早に行ってしまった。
足には長靴をはいていた。

      いろんな事があたまを巡る。
      見えなくなるまでおばちゃんの後ろ姿を追いかける。
      あの人は強い人だ。ああいうふうに私も生きたい。



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