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いつだったか、白鳥にバクっと噛まれたことがある。

tabihitotsu

自慢にもならないが、魚にも噛まれたことがあるしエミューにつつかれたことも
トンビにおにぎりをさらわれたこともあるけれど、
白鳥の時は笑えなかった。音も凄かったし、泣きたい位痛かった。
くしゃくしゃな気持ちになって「なにすんのよ!」と覗きこんでも
黒くて丸い目は宙を浮いていて、
何を思っているのかさっぱり感じられない。恐ろしい。
噛まれた指はいつまでもジンジンと痛い。

以来、理解不能な生き物。要注意!という、
身勝手極まりない印象になっていたものだから、注目したこともなかったわけ。
それがこの優美さ!



視界に人工物が何もないものだから、見えているものの全てがまるで夢のようだった。
寒いというのが、また良かった。

       暗さが増してきて我に帰る。
       鳥たちも羽根にすっぽり首をうずめて眠り始める。
       そろそろと時間がきた。


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