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工房は母屋の横に別棟であった。
引き戸を開けると土間があって右と左にこけし棚がある。
正面に3、4畳だろうか。畳のスペースがあって火鉢がひとつ。
奥にご主人のお父さんのこけしがずらりと並んでいた。



「これね、おじいさんの、晩年の作品なのね。
亡くなる前の年くらいからの。
昔は白内障なんて治せなかったから、この頃には、
眼なんか全然見えてなくて、カンで描いてるのよ。
だから、左右がちょっとちぐはぐでしょう。
若い時の威勢のいいもんは、全部売っちゃってもう、
無いからね、おじいさんのこけしは看板だから、
無いとうちも困っちゃうからね、頑張って描いてくれたのよ」



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