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新地というのは遠刈田こけしの工人さん(こけしを作る人)の集落。 昭和の中ごろからこけしブームというのが到来したそうで、 そのころは、工人さんのところに注文が押し寄せた。 デパートなどではこぞってこけしフェアをやっていたらしい。 「昔はね、新地へ行くと、あちこちの家から轆轤(ろくろ)の音が聞こえていて 活気に溢れていたものだったのよ。 今はもう、寂しいものよ」 こけしに詳しい、こけし店の店主のはなし。
今、私たちの前にも後ろにも、車1台、ひとっこひとりいない。 雪はやんでいて、あたりはひっそりと静まり返っている。 雪がふかふかに積もる杉林の中に乾燥を待つ木が積まれている。 こけしが飛ぶように売れた時代は終わった。 昭和の名工といわれた工人の名前を掲げた店が並んでいるが、 どこもひっそりと静まり返っている。 代は変わって名工のお孫さんが50代とか60代とかいう年齢になっている。