アノニマ・スタジオWeb連載TOP > かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~ もくじ > その15 おもちゃ箱カー for息子
文・写真・題字/中村家
<< はじめに 連載もくじ >>
その15
おもちゃ箱カー for 息子
いつの間にか増えていく、子どものおもちゃ(どうして買っているつもりもないのに増えていくのだろう)。もともと娘のおもちゃをいれていたキャビネットに息子のおもちゃも仕舞っていたこの数年。いよいよお互い整理がしにくそうになってきて、片付けのたびにケンカ勃発一発触発…という日々が続き、いよいよ息子専用のスペースを作ることにしました。とはいえ、家具らしい家具を置きたくないなあということで、車大好きな息子も喜ぶ移動式おもちゃカーを作ることに。素材は娘が赤ちゃんの時に購入した壊れた子どもタンスです。父、佳境で不在の日々に初めて母と子どもだけで挑んだブリコラージュ誕生!でもあります。
おもちゃ箱カーまでの日々
(2021年5月1日~5月31日まで)
5月1日
我が家から見える湖畔のゴミがずっと気になっていた。子どもたちも気になっていたようで「ゴミ拾いしようよ」と言っていたので、近所の子達も一緒にクリーンアップをすることに。30分ほどで大きなゴミ袋5袋がぱんぱん。なぜ!湖畔にゴミを捨てるのか…。5月2日
地域メンバーではじめた、お米作り。今日は田んぼの苗床作りの作業。一角にはクレソンがもりもりと茂っているので作業のごほうび(?)にもりもり収穫。サラダにしたらとても美味し~。5月3日
野菜の苗を育てているイイノさんからトマトの苗を3つ購入。イイノさんが種とりして、種から育てたトマトの苗。藤野の韓国料理屋さん「百笑の台所」で待ち合わせたところ、山羊がいるので、子どもたちによる山羊の餌あげタイムが始まってしまった…。長々と。延々と。子山羊のかわいさ。そしてオス山羊の気性の荒さ。苗をブリコラ農園の一角に植えました。5月4日
先日に続き、移転オープンに向けてリノベーション作業中の「studio fujino」の作業お手伝いへ。今回は家族全員でひたすら切り拓いた林の木を焼く係。 汗だくになって気持ちよかった。帰ってきて「家族と一年商店」オープンにむけ撮影。他店のお手伝いを気持ちよくしつつ、自分たちのお店の開店準備もする、と。こちらは微々たる進展…。5月5日
子どもの日。今年は鯉のぼりを出してあげられず、心残りあり。じいじとばあばも来てお祝い。田んぼの種籾を撒きもした。いよいよお米を育て始める!緊急事態宣言中ということで、ずっと藤野で過ごしたGWは、むしろすごくよい時間だった。5月6日
田んぼに見回りに行くと、蒔いた種からちょろちょろ芽がでてる!わ~~~お。感動だ。5月7日
今日も今日とて田んぼのクレソン摘んできて、焼いたピザにてんこ盛りにして食べる。ピザはいつも強力粉に豆腐を混ぜた発酵なしの生地。もっちり、かんたん。家で食べるピザとしては、十分に美味しいのよ。5月8日
そこかしこにさくらんぼタワワに実っている季節。散歩していると足を止めて「さくらんぼ~~~~~」と言い続ける樹根に近所の人が自宅のさくらんぼを一枝折って渡してくれた。散歩の副産物(?)素晴らしすぎるね!一粒(だけ!)わたしにも分けてくれましたよ。5月9日
母の日。朝、花種さんが手紙をくれてふわふわのカフェラテも淹れてくれた。ひょーさんの友人たちが我が家でBBQってことで、ひょーさんは前日から裏庭の木を切り開き、タープはって会場セッティングに余念がなかった。おもてなし精神非常に高くてすばらしいけど、忙しいとか時間ないとか言って、いろいろ滞ってる我が家の最近。BBQにこんなに時間費やしていいのかい?という疑問がわたしの胸に渦巻いてはおります。BBQは近所の子達も集まってわいわい楽しくよかった。けれど、わたしの胸にはなにかが渦巻いてはおります。5月10日
先月隣に引っ越してきたリトアニア出身のヴィカ。仕事は「かき氷屋さん」なんだけど(季節の植物をつかった、独創的なかき氷!)それ以外にもいろんなものを作っていて、今日はたい焼きをもらった。あんこの入っていない、すっぱい生地のたい焼きが、おもしろい。5月11日
ひょーさんが腕に湿疹が出て痒いって。腕に赤い湿疹たくさん出ている…。心当たりはあります。BBQでタープをはるために枝に紐をぐるぐる巻いた木、ウルシだったんじゃないかな?っていう心当たり。症状を調べたらウルシの可能性、大。「気合で3日で治す」と言っております。5月12日
起きたら唇ぼんぼんに腫れてるひょーさん。「昨日唇が乾いてたから、リップクリーム塗りたくったら、マンゴー成分入りのリップだったんだよね。マンゴーってウルシ科らしいんだよね」って滅多にリップクリームなんて塗らないのに、いろいろ奇跡を起こす人…。パンツの中を覗いて「やば…ここまで腫れてきた!」と言うや否や、朝ごはんも食べずに病院に向かってました。ウルシは気合で乗り切れなかった模様。5月13日
東京から、ちぇるさんがやってきた。ちぇるさんはわたしが20歳の頃からやってた音楽活動で、一緒に活動をしていた相方。27歳くらいまでやっていた音楽活動中の間に、花種さんが生まれ(ちぇるさんは出産に立ち会ってくれた)子連れでライブツアーだ、レコーディングだ、ひょーさんは子育てに無関心だ、等々感情ジェットコースターの日々を一緒に過ごしてくれた、大切な人。音楽活動を休んだ後、お菓子屋さんのパートナーとともにお店を切り盛りしていたちぇるさんのここ数年。最近いろいろ変化が起こったそうで、話したい、会いたい、と藤野に来てくれたのです。会いたい、ときてくれたことが嬉しかった。話すって、たいせつ。5月14日
午後、おとなりのレイコさんが「さくらんぼ、取りに行こう~!」と誘ってくれたので近所の子どもたちも車に乗せて、車を走らせてさくらんぼの木へ。小ぶりだけど甘いかわいい、さくらんぼ。木から直接、取り放題。食べて、取って、食べて、取ってそれぞれボールにいっぱいになるほど、さくらんぼ狩りしたよ。5月15日
ひょーさんがバタバタしていて、家族と一年商店の作業もススマズ。オリンピックをやるだのというニュースを見て、心がひんやりする。子どもたちと散歩に行き、5月の風と光をあびて、ひんやりした心をあたためる。5月16日
花種さんが赤ちゃんの時に買ったパイン材の子ども用タンス。今は樹根の服を入れてはいたけど、もともと安いタンスだったのもあり、棚板を止める部分が壊れてしまって非常に出し入れしにくくなっていた。ので、もう解体してしまおう。そして樹根くんのおもちゃを整理したかったので、おもちゃケースにしよう。ひょーさんなんだか忙し気だけど、おもちゃケースくらいなら、子どもとわたしで出来そうだし、やっちゃおう。と、次回のブリコラは初のひょーさん抜きで進めよう、という計画を立てております。5月17日
ブリコラ農園。わさわさと茂ってきています。種から育てているカブも、葉っぱがわっさわさ。なので間引きました。お味噌汁やら葉っぱのふりかけやらに使おう。5月18日
花種さん、10歳。友達に思ったことを言えない、のは優しさでもあり、けれどやっぱり思うことはある、そして思うことってのは言わなくても相手にも伝わるものでもあり。そんなこんなで人間関係に少し頭を悩ませたりもする、そんなシーズン真っ只中。わたしが「気持ち伝えてみてごらんよ」というと、ずっと「言えないよ」と言ってた彼女が「言えるかな。言ってみる!帰ってきたら、ママに話すね!」って言って駆け出していった背中を見たら、思わず涙目になるね。伝えてみても、うまくいくこともいかないこともあるのが人間関係ってもんだけど。一歩踏み出した彼女に、今日のおやつはがんばっタルトを焼きました。5月19日
そろそろ夕飯の準備をしようか、という16時半頃から花種さんが近所の友達とキッチンを独占し、むしろキッチン~リビングと一続きの部屋に入ることすら許されずお菓子つくりを始めたので「今からああ~~~??」と思いつつ「ママをもてなすから、待ってて!」と言われたら「…待つか」と待つこと1時間。マフィンとヨーグルトのドリンク作ってくれまして、ママいつもありがとうって。嬉しいよ。夜の時間は大幅に押し押しだけども、うれしいよ。5月20日
なんと藤野にも量り売りのお店ができる!!のです。駅前にあるフェアトレード商品などを取り扱っている「ライトハウス」のりえさんが、ちょっと前から「量り売りをうちでもやれたらなあ」と言っていろいろと動いていてくださり、賛同する人たちもそれぞれ手伝ったり応援したりがあり、ついに量り売りコーナーがオープン!これはとても嬉しいなあ。取り扱いの品も地域の人で意見を出しあって進めていてさ、藤野ってほんといい町だなあとしみじみ。5月21日
おとなりのれいこさんが、庭の「ユスラウメ」がタワワだから取りにおいで、と誘ってくれて、さくらんぼに続きユスラウメ取り放題。大きくて甘いユスラウメは、もうほぼさくらんぼのよう。5月22日
地域のチームのお米作り。今日は代掻きという、田んぼのデコボコを均平にする作業。人生初、トラクター操縦をしました。育ちつつある稲。田植えも近い!!作業でどろどろになった午前の後に、ブリコラ作業しようと思っていたけど、力尽きた。体痛い。眠い。ひょーさんはなんだかバッタバタで不在の5月。ちゃんと話していないことが積み重なっておりますね(画家の今井麗さんのパルコミュージアムでの展示の空間構成の仕事をしている現在、佳境)。5月23日
子どもたちとブリコラ作業。と、いっても箪笥の箱を余りペンキで塗り塗りするだけだけども。グレーと緑のペンキを混ぜて、いい感じのカーキグレー色のペンキを配合。5月24日
花種さんは毎日お弁当なのだけど、毎日わたし作っているのですけれど、以前クラスのお友達がお弁当を作ってくれたことがあり、お返し弁当作ってあげたい!ということで、今日は自分のと、お友達のお弁当作って行きました。お菓子作りとちがって、包丁などが危なっかしくて「ちょちょちょっ……!」「おいおいおいおい~~~~!!!」と横から口出しまくってしまったけど、なかなか美味しそうなお弁当ができてたよ。5月25日
ブリコラ農園のお野菜たちが、なんともモリモリ育ってくれて、毎朝野菜をとってきて、サラダにしたりして食べている。しあわせを感じてます。5月26日
れいこさんちでとらせてもらったユスラウメをコンフィチュールにしたら、まあ美味しい。そんでコンフィチュールとヴィーガンカスタードでタルトにしたら、まあ美味しい。たくさん作ったので近所のひとたちにもわけたりして、しあわせを感じてます。5月27日
家に帰ったら、庭の木に籠がかけてあって、中には小梅が山盛り入っていた。ご近所さんがとって、置いておいてくれたのです。カリカリ梅を作ろうか。しあわせを感じてます。5月28日
愛車の古いジムニーのバッテリーマークがチカチカし出して、JAFに連絡してみたら即レッカーされてしまった。そんな中、庭のドクダミと蛇苺を摘んでウォッカにつけて、夏用のチンキを作った。このチンキにハッカオイルを混ぜたら、虫除けに虫刺されに、万能チンキとなるのです。ええ、わたしはしあわせを感じています。5月29日
今週末もひょーさんは仕事で不在。人生を主体的に、自分でコントロールして、社会や子どもたちに何の罪悪感も持たない、胸を張れる生き方をしたい。しよう。そういってたくさんのものを手放したつもりだったけど、理想通りに進むわけがない中で、手放した一部をもう一度拾ってみたりもしている、我が家の現実。矛盾を抱えつつ、それでも「元」に戻ってはいない。一歩進んで二歩下がって、でもまた一歩進むんだ、という渦中。思うようにはいかないと、焦って責めあって、ケンカになる。けど、ここに今あるよきものに目をむけよう。そう心がけてます、この数日。花種さんが友達とドーナツをものすごい量作って、ほとんど自分たちで食べている姿…を見て、ええ。しあわせを感じてます。今日も。5月30日
塗った箪笥の箱の四隅にタイヤをつけて、樹根のおもちゃ箱カー、完成。ひょーさん不在でも、これくらいのものはできるね。樹根のおもちゃを整理して、部屋のすみへ駐車。カプラ(木の板の玩具)の箱にもタイヤをつけて、カプラカーもついでに製作。おもちゃカーで、部屋を爆走する樹根。片付けもお願いね。5月31日
アノニマ・スタジオの村上さんと、デザイナーの藤田さんの事務所へ打ち合わせに行く。なんと。わたしの本ができるのです。なんと。その装丁の打ち合わせなんです。なんと。数年前はもー笑っちゃうくらい夢物語でしかないと思っていたことが今現実で動いている。なんてすごいことなんだ。だから今は笑っちゃうくらいに夢物語でしかないことたちだってね、きっと現実にできるんじゃないかなってね。そう思うことにしよう。<< はじめに 連載もくじ >>
中村俵太(父/夫)
「HYOTA」として空間デザインを生業にしつつ、中村家のあらゆる『家族』活動のディレクター的立ち位置も。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。家族愛は強いがピントがいつもややずれがち。
中村暁野(母/妻)
家族や生活をテーマに執筆活動を行なっている。理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。ブリコラ生活の果て2021年夏「家族と一年商店」がオープンし小商店主という予想だにしていなかった人生展開もスタート中。
中村花種(娘)
繊細で敏感な子ども時代を経て、現在爆発的パワーで家族を圧倒する思春期入り口の13歳。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で壁を越え、自分の世界を築こうと成長中。現在両親のやることなすこと、言うことスベテが気に入らない反抗期真っ只中。
中村樹根(息子)
マイペースでごきげんな6歳児。人類みな友達的オープンマインド。恐竜がだいすきで1日の半分、心は恐竜の世界へ。甘いもの大好き。虫歯になりがち。姉とはトムとジェリーのような関係。
バター(うさぎ)
花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っていた、アメリカンファジーロップのオス。2022年の3月、天国へ...。花種さんの部屋の前の、ユスラウメの木の下に眠っている。
アノニマ・スタジオWeb連載TOP > かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~ もくじ > その15 おもちゃ箱カー for息子
Copyright(c) Akino Nakamura , Hyota Nakamura , Katane Nakamura , June Nakamura & anonima-studio