アノニマ・スタジオWeb連載TOP > かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~ もくじ > その16 バンブークローゼット for みんな
文・写真・題字/中村家
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その16
バンブークローゼット for みんな
我が家の寝室にあった魔境のような空間ふたつ。ひとつは家族の衣類をまとめて置いてある日陰の空間。もうひとつは使わないものをぎゅうぎゅうに押し込み扉を閉めっぱなしにしていた押し入れ。湿気が篭って梅雨になるとカビが大発生するふたつのスペース、まとめて解決するために、扉も中身も取り払い押し入れをオープンクローゼットへ!そこに日陰に吊るされていた服たちを収納!することにしました。棚板は廃材で、ポールには藤野の竹を使って制作。これで湿気もカビも怖くない、換気バッチリ使いやすさもバッチリのバンブー製のオープンクローゼットが出来ました。
バンブークローゼットまでの日々
(2021年6月1日~7月11日まで)
6月1日
先日籠いっぱいにもらった小梅。カリカリ梅を作ろうと意気込んでいたんだけども、数日とりかからずいたらあっという間に甘い香りがしてきてしまった…。つまり熟してしまった…。カリカリ梅は青梅じゃないとカリカリしないよ、あたりまえだよ。ということで、完熟小梅のジャムを作るより他なくなった…という6月のはじまり…。6月2日
アイスコーヒーがウマイ、じめじめ季節到来。わたしの音楽をやっていた時代の相方ちぇるさん。お菓子屋さんのおかみとしてこの数年バリバリに働いていたちぇるさんがお菓子屋さんを離れ、藤野にやってきた。「音楽をつくりたい」って。うちから10分ほどの山荘に1人籠って2週間の音楽制作を始める。夕食をうちに食べに来たちぇるさんを囲んで、みんなでごはん。6月3日
朝ぐずぐずの樹根くんに「ねえ!湖でなにか動いたよ?!ネッシーかも!!」と母は迫真の演技で対応。まんまとノってきて「え?!あ!ほんとだ!!ネッシーかも!!」と、樹根。湖から目を離せないということで、湖側の縁側に小さいテーブルを出して朝ごはんする事態に…。うまく乗り切ったと思いきや、乗り切れなかった。そんなこんなで遅刻ぎりぎり。6月4日
近所のチームで行っている田んぼ。種から芽を出した稲グングン育ち、現在24センチ!6月5日
すっかり桑の実とりに出遅れてしまった。そこかしこに実る桑の実を「そろそろとらないとな~」なんて思いながら日が経ち。「桑の実とり行こうよ~~~!!」と樹根に迫られ、いざ向かってみると心当たりのスポットは「今シーズンは終了です」ってな有様。あきらめきれない樹根と、近所のキヨノちゃんと、ちぇるさんと、ひょーさんと(花種さんは友達と遊んでるといって不参加。桑の実より友達かあ…と感慨深い)、桑の実求めて車を走らせ…ついに見つけたちょうどとり頃の桑の木。高い枝に実っているもんで、ジムニーの屋根に登って桑の実とったよ。ジムニーめちゃくちゃ汚れたよ(桑の実の紫の汁で)。そんなこんなで思い出に残る桑の実とりになったよ。6月6日
ブリコラ農園で育ったイタリアンパセリやレタスを挟んだツナサンドを食べて、家族と、今日もちぇるさんも一緒に長野の木工職人、モリさんに会いに行く。ひょーさんが頼んでいた仕事の什器受取りと、今後の相談。準備中の「家族と一年商店」でもモリさんには色々ご相談したいことがある。みんなで長野のお気に入りのうどんやさん「やまゆり」でうどんを食べて帰った。6月7日
テラスから手が届くところに大きな胡桃の木がある。山胡桃がたわわ。青い胡桃を砂糖につけてつくるイタリアのお酒があるらしくて、今年つくってみたいな~と思っているんだけど、思っているまま、まだ手をつけていない(手をつけないまま終わる予感もアリ)。6月8日
近所のコシノさんからカレンデュラの花をたくさんもらった。コシノさんは花ごと太白ごま油に漬けてオイルにしているというので、わたしもそのままオイルにつけてみよう。お手軽お手製カレンデュラオイルができたら嬉しい。6月9日
育った稲をぐんと根っこごと抜いて、田植えしやすいように、束に。今週末は、いよいよ田植え!6月10日
花種さん「工芸」の授業で作った作品を持って帰ってきた。土の粘土で作った丸い玉4つ。丸、といってもいろんな丸がある。そして動物3匹。うさぎと、牛と、ねずみ。どれもとても素敵だったからリビングに飾った。6月11日
家に帰ったら枇杷の実と葉っぱがごそっと玄関に。お隣さんの木に実っているのを毎日樹根が「いいな~~」と言っていたから、切っておいてくれたのだと思われる。いろんな実の収穫と、収穫したものをいただくのに追われているようなこの時期。6月12日
晴天に恵まれ田植えDAY。というか暑い。ずっと中腰での田植え作業腰にくる…。子どもたちもみんながんばり、無事、田んぼ全域に稲がずらりと並んだ。達成感。6月13日
きゅうり、レタス、バジルにパセリ、ラズベリー数粒。まだ収穫はできないけれどトマトも育っている。ブリコラ農園で種から育てた野菜たち。正直、種を撒いて水をやる以外何もしていないので「手をかけられていない感」は収穫量や畑の見栄えに現れていると思うのですが。こんなに手をかけていないのに、こんなに実るとは。種とは、太陽とは、土とは…(スゴイ)。6月14日
花種さんに、今年中に身長を抜かされる気がする。 ひょーさんはもうすぐ渋谷のパルコミュージアムで開催される画家の今井麗さんの展示「MELODY」の空間構成が佳境。「今度こそパルコミュージアム出禁になるかも…」とか言っているので無茶な構成案を進めてる様子。こういう時のひょーさんはすごく生き生きしてる。表現者の真摯な表現が伝わり届く方法、そのための空間を考えることは、多分ひょーさんの天職であるんだろうと思う。なんだけれども、ナゼか今、家族でお店を立ち上げる準備も始めている。それってなんでだっけ?と、思ったりもする。ひょーさんは空間のお仕事がんばって、わたしは文章書く。それがシンプルなんじゃ?とか。でも、ニュースを見れば「おかし~いだろう」と思うことばかりで、そんな「おかし~い」ことに「おかし~い」と思い続けるために、自分たちの生き方に後ろめたさを抱えないために。そう思って新しい日々に向かってるはず。そうだったそうだった。スムーズに進みはしないことがあるのは当然なんだ。こんな混乱も、当惑も、どこか想定内の現実ではあるんだ。6月15日
漬け込んでいたカレンデュラの花のカレンデュラオイル完成。匂いも色も、まさにカレンデュラオイル!髪にも身体にも身体にもどんどん使お~。ヨモギオイル、どくだみチンキ、カレンデュラオイルと揃って今年のスキンケアは安泰だ。6月16日
湿気にやられて生野菜と冷たい麺しか食べたくない。藤野の湿度はひどくて、この時期気を抜くと竹や木のカトラリーやら籠やら、全てカビる。我が家の魔境の一つ、寝室の奥のクローゼットは特に危険地帯。風通しが悪く、毎年服や鞄にカビ発生。使い勝手もすこぶる悪いし、つぎのブリコラではこの魔境地帯の改善に着手したいところ…。6月17日
花束みたいなカモミールをいっぱいもらった。嬉々としてフレッシュカモミー飲み放題。6月18日
ちょっと前から、ちぇるさんはうちの2階の部屋に暮らしている。二週間の予定でうちの側の山荘を借りて音源制作をしていたのだけれど、予定通りには終わらなくって、うちに滞在しつつ、引き続き山で音楽制作をすることになったのです。今朝はちぇるさん作のスコーンが朝ごはん。思い通りになんかいかないこともあるけど、そんな時にはさ…なんて話をちぇるさんと毎日してる、最近。6月19日
毎年恒例、長野の祖母宅の梅とりへ。せっかくなので長野県立美術館で開催されているmame kurogouchiの展示も観に行く。以前ある仕事で一緒になったmameさん。会場でmameさんにも会えた。久しぶりだったのに、子どもたちは車酔いと照れでそっけない態度。表現の核の部分を開いて見せてくれるような展示だった。6月20日
家族総出、亡き祖母宅の3本の梅の木に実った梅をとって、とって、とりまくる。毎年30キロ以上とれる。とるのは楽しく、この大量の梅をどうしよう…と恐怖を感じるくらいの量でございます。6月21日
長野から帰ってきて、田んぼパトロール。稲は無事すくすく!6月22日
梅仕事に着手。まずは梅ジャム。鍋二つにナミナミ。でも今年はちぇるさんがいたので、1人で黙々。ではなく向き合ってしゃべりながらだったので、随分たのしい梅仕事となった。6月23日
夕方、ちぇるさんが2階で歌っていると保育園から帰ってきた樹根が駆け上がって行っていち早く覚えた歌を一緒に歌ってる。2人の歌声を聞きながら夕ご飯を作る。一生懸命やってきたのになあ、なんでこんなことになったんだろうなあ。今いろんな場所で行き場なく、渦巻いているたくさんの人のたくさんの感情がきっとあるから、そんな感情にむけても歌えたらとちぇるさんは言っていた。夕方の我が家にそんな音楽が毎晩、響いています。6月24日
2鍋分の梅ジャムを瓶詰め。お裾分けしまくろう。梅ジュースと梅醤油と梅干しもやらねば。6月25日
今井麗さんの展示「MELODY」初日。入口から見える黄色に染められた空間に浮かぶようなクマさんが圧巻。早く展示観に行きたいな。ひょーさんもがんばったんではないでしょうか~。6月26日
すぐ隣に住むヴィカからお手製の赤いしゅわしゅわしたビネガージュースをもらった。ヴィカは日本語はほんの少し、私は英語はてんでしゃべれないし、身振り手振りのコミュニケーションを毎度しているので材料を書いたメモもくれた。美味しいし、かわいいし、うれしいし。6月27日
家族で麗さんの展示へ。それはそれはスンバラシイ展示であった。強さ、優しさ、ユーモアと大胆さ。麗さんにしか視えてない世界をこうしてわたしたちも視れるという喜び。に溢れた展示だった。ひょーさんの空間構成もよかった。とても!6月28日
ひょーさん少々仕事落ち着いたので、湿気がこもっているクローゼット問題に着手したいものですね、と話しつつ。お隣さんにもらって美味しく食べた枇杷の種を埋めてみる。芽がでてきたらいいなあ。6月29日
野菜を毎週届けてくれている、宮本さんが種とりしたインゲン豆。その種をもらって蒔いたらニョキニョキ育ってる。ニョキニョキ。いやグルグルと。ブリコラ農園、盛り上がってる~。6月30日
アナベルがきれいに咲いたので、何本か切ってテーブルに。朝、台所に立っているとちぇるさんが隣でコーヒーを淹れてくれるのが最近の朝のルーティーン。7月1日
7月の始まりはじとじと雨。でも田んぼには大きなひまわりが咲いたよ。7月2日
「家族と一年商店」オープンに向けて撮影をする。何事もやってみると予想の数倍難しいというね…。7月3日
ブリコラに着手。寝室の押し入れに詰めに詰めていた、よくわからないものたちすべて出し(チョー大変)寝室の奥に詰めに詰めていた服もすべて出し(チョー大変)そして空になった押し入れの板をベッキベキと外し、まずスコンと抜けたスペースに。そしてペンキを塗った。先は長いよ。7月4日
今日も今日とてペンキ塗り。そして、先月改装作業を少しお手伝いした「studio fujino」 のオープン企画展に滑り込み。藤野にすばらしいスペースができて嬉しい。7月5日
創作中華の「大和家」さんの店前の無人販売に、も…桃が!!桃が~~~!!しかも1個50円、100円という…。大興奮でたくさん買ってしまった。デザートは1人1個、桃を丸齧りという贅沢。7月6日
明日は七夕。ということで、滑り込み(?)で短冊を作るために庭から笹とってきてよ、と花種さんに頼んだら予想以上に大きい笹を引っこ抜いてきてくれた。わたし、ひょーさん花種さん、樹根くん、そしてちぇるさんも一緒に、短冊を書いた。7月7日
今年の短冊の願い事は「平和」。なんだか、最近はそんなシンプルででも切実さも込み上げるような願いごとしか浮かばない気がする。花種さんは「戦争が終わりますように」って書いてたよ。もう一枚には「韓国に行けますように」とも書いてたよ。7月8日
押し入れの扉と棚を全部開け放ち、湿気とおさらばのオープンクローゼット化改装計画。クローゼットってポールが必須だけども、ポールになりそうなものが今見当たらないよね…ってところで思いついたのが、藤野にニョキニョキと生えている竹。ポールになるんじゃない?竹って成長スピードがとても早いし、今注目の素材でもあるし。隣町の金物屋さんで見つけ、可愛くていっぱい買ってしまった竹籠も使わないまましまってあるし、それもどうにかクローゼットで使ったらいいのでは?と思いつき。ためしに背負いカゴの紐を外してバッグを丸めて仕舞ってみたら、これいい感じなのでは?ということで、今回は「バンブークローゼット」を作ってみよう、ということに。7月9日
バンブークローゼット計画。竹籠をしまう棚板はアトリエにあった板をあまりペンキで塗って制作。そして、肝心の竹をどこでもらえるか。家の裏に竹林のある池辺さんに連絡してみる。「いいよー!」と言ってくれて明日切りに行かせてもらうことに。庭のミントやレモンバームにお湯を注いで飲む。お手軽フレッシュハーブティー。7月10日
竹を切らせてもらいに池辺さん宅へ。竹は時期によっては数日で数メートルも伸びてしまうから管理が大変なんだそう。ぎこぎことノコギリで2本、切らせてもらった。池辺さんのパートナーのスミさんが梅ジュースを持ってきてくれてぐびっと飲んだら、生き返った~。7月11日
竹の葉っぱや笹部分を落として棒状にして、クローゼットに取り付け。晴れてバンブークローゼット完成!風通しがよくって、カビも怖くない!しかも寝室で負のオーラを放っていた魔境も消失!と、思いついてから出来上がるまで短かったのに今回すごくいいものができたんじゃないかしら。もやもやすることもたくさんあるけど、こうして日々の中に自力で喜びを生み出せると、力が湧いてくる。自分たちで自分たちを鼓舞して、進むぞ。進むんだぞ。<< はじめに 連載もくじ >>
中村俵太(父/夫)
「HYOTA」として空間デザインを生業にしつつ、中村家のあらゆる『家族』活動のディレクター的立ち位置も。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。家族愛は強いがピントがいつもややずれがち。
中村暁野(母/妻)
家族や生活をテーマに執筆活動を行なっている。理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。ブリコラ生活の果て2021年夏「家族と一年商店」がオープンし小商店主という予想だにしていなかった人生展開もスタート中。
中村花種(娘)
繊細で敏感な子ども時代を経て、現在爆発的パワーで家族を圧倒する思春期入り口の13歳。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で壁を越え、自分の世界を築こうと成長中。現在両親のやることなすこと、言うことスベテが気に入らない反抗期真っ只中。
中村樹根(息子)
マイペースでごきげんな6歳児。人類みな友達的オープンマインド。恐竜がだいすきで1日の半分、心は恐竜の世界へ。甘いもの大好き。虫歯になりがち。姉とはトムとジェリーのような関係。
バター(うさぎ)
花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っていた、アメリカンファジーロップのオス。2022年の3月、天国へ...。花種さんの部屋の前の、ユスラウメの木の下に眠っている。
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