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文・写真・題字/中村家
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チャプター2
その8 ブリコラ家族の「家族と一年商店」(最終回)

昨年の12月、わたしたちが暮らす藤野という町の駅からすぐそばの、小さな小さなスペースに「家族と一年商店・駅前店」がオープンしました。
家族と一年商店はエシカルな暮らしのアイテムを扱うお店として、4年前にオンラインでわたしが始めたお店です。
駅前につくったお店では地域で活動している方々が作るものの背景を感じられたり、暮らしのヒントになったり、ものを売るだけじゃなく、いろんなものごとに出会えて考えるきっかけになる場所。人と人が繋がる場所。
そんな場所にできたらなあと思いながら、全部を廃材で夫ひょーさんのブリコラージュで作りました。
週に2日だけ開けるこのお店に立つ時間が、とてもとても好きです。

クリアなカウンター側面に今は落ち葉がいっぱいに詰まり、winterに○がついています。

改めてこう書いてみると不思議です。
お店をやるなんて、人生の中で全然描いたこともなかったのに、家族と一年商店を営むという、まさかの展開が始まったのは『かぞくのブリコラージュ』のシーズン1を書いていた2021年8月でした。
連載はコロナ禍をきっかけに始まりました。
空間デザインを生業にしていた夫の仕事がすっからかんになった時「今が変わる時だ!」と、それまでの仕事で溜まった廃材を使って、家族で暮らしをブリコラージュしていくことを思いつきました。消費のサイクルの中で、作ったものもすぐにゴミに変わってしまうこと、そんな暮らしの中で本当は大切にしたいこととの間にずっとあった矛盾を手放せる!と、むしろチャンスを得たような気分で、当時こんなことを書いていました。
収入は絶たれ、行き先不明。ぐらつく気持ちがないわけじゃない。(夫はないらしいけど)それでもきっと、「かぞくのブリコラージュ」は自分たちで暮らしをつくる、喜びに満ちた日常の発明記なのです。
そんな日々を約1年ほど続けた後、(本当に見事に仕事がない1年でした)この先も大切にしたいことを真ん中にして、暮らすこと、働くこと、生きることって、どうしたらできるだろう?とぐるぐる考え、始めたのが「家族と一年商店」でした。

これぞブリコラージュ!を感じられてとても気に入っています。

基本はオンラインショップで、時々オープンデーを開いて、そんなかたちで始めたお店が新しいきっかけになって、たくさんの人と繋がることができました。
お店を通して生まれたたくさんの出会いが決断したことをもっと先へ先へと後押ししてくれているようにも感じられて、お店を始めて本当によかった!と何度も思いました。が。
ごく当然ではありますが、小さなエシカルショップだけで生きていく!なんてちょっとかなり、まだまだ課題は多く難しく…。そんなわけで、コロナの収束とともに、夫ひょーさんに空間デザインの仕事が再び舞い込みだした時はほっともしたのです。でも、ありがたさと同じくらい、悔しかったり寂しかったりする気持ちも湧き上がりました。
変わりたかったのに、変わろうと意気込んだのに、結局わたしたちは変わりきれなかったんだな、と。
でも小さな失望感の後に、すべてを手放し、すべてを変える、そんな選択ができたらそりゃ、かっこいいけれど、そんな劇的なことなんてそうそう簡単にできるわけがないんだわ、とも思ったのです。
「変わろう」としたことで、「変わった」ことは、小さいけれどちゃんとある。そんな「小さな変化」を見くびらず、諦めず、コツコツと重ねていこうと思いました。

泥もついていたりします。
2021年から約4年!
コツコツの日々の果て、去年3人目の子ども実芽が生まれ、家族の変化が急激に急速に進んでいると、ふと駅前で物置として使われていた小さなスペースを使わないか?と声をかけてもらいました。そうか、また何かが動き出していく時なのかもしれないな、とバタバタと流れに乗って、お店ができました。

現在「エシカルな暮らしのヒント」コーナーは、
服部雄一郎さん・麻子さんからいただいた小包を届いた段ボールごと展示中。


暮すこと、働くこと、生きること。
「かぞくのブリコラージュ」をしよう、と決めたあの日に描いた姿からはまだまだ遠く、今もたくさん矛盾を抱えたままの、家族の暮らし。
まだまだどんどん溜まっていくたくさんの廃材は、わたしたちの矛盾がそのままかたちとして目の前に並んでいるようでもあります。


でもそんな廃材を使って作った「家族と一年商店」って、なんだかすごくわたしたちらしいお店だなあとも思う今です。
矛盾を糧に、ほんのひとつ。小さく重ねていくこと。
小さく変わっていく、その力を信じて、なにも、あきらめないこと。
完成のかたちなんて想像もできないまま、わたしたち家族のブリコラージュはまだまだずっとずっと続いている、その途中なのだと思います。

お知らせ
次回、夫ひょーさんによるエピローグをお送りします。
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中村俵太(父/夫)
「HYOTA」として空間デザインを生業にしつつ、中村家のあらゆる『家族』活動のディレクター的立ち位置も。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。家族愛は強いがピントがいつもややずれがち。
中村暁野(母/妻)
家族や生活をテーマに執筆活動を行なっている。理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。ブリコラ生活の果て2021年夏「家族と一年商店」がオープンし小商店主という予想だにしていなかった人生展開もスタート中。
中村花種(娘)
繊細で敏感な子ども時代を経て、現在爆発的パワーで家族を圧倒する思春期真っ只中の14歳。家族以外の人には丁寧で優しく好感度大な人物へと早変わり。内弁慶の壁を越え、自分の世界を築こうと成長中。
中村樹根(息子)
マイペースでごきげんな7歳。人類みな友達的オープンマインド。小学生になってから大谷翔平に心奪われ、野球大好き。甘いもの大好き。虫歯になりがち。姉とはトムとジェリーのような関係。妹を溺愛中。
中村実芽(娘)
閏日に生まれてきた末っ子。家族の人気者。食べるの大好きで、隙あらばみんなと同じものを食べようとする10ヶ月。いつも落ち着いていて、生まれて以来、大泣きしたのは数えるほど。
コグマ(犬)
バター亡き後やってきた元保護犬。命名したのは花種さんで、韓国語で「さつまいも」の意味。番犬気質で家族以外には吠えまくるけど、優しい性格。困り顔がチャームポイント。
バター(うさぎ)
花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っていた、アメリカンファジーロップのオス。2022年の3月、天国へ...。花種さんの部屋の前の、ユスラウメの木の下に眠っている。

家族カレンダー
中村暁野定価 1760円(本体価格1600円)
ひとつの家族を自身の家族で取材して制作する雑誌『家族と一年誌 家族』編集長である著者による初めての自著。ブログに綴った5年の間には、たくさんの幸せな日とそうでない日とがありました。「家族」を通して自分と社会に向き合い続けた実験の記録。一日々々のかけがえのなさを感じられる一冊です。
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