本はもちろんアートや映画など、さまざまなカルチャーもSDGsへの入り口になっています。2020年、東京ではSDGs映画祭が開催され、そのほか各地でサステナビリティをテーマにした映画の上映会やオンライン上映なども多く見られました。コロナ禍における生活様式の変化もあり、SDGsへの関心も高まった年であるといえます。
今回は、サステナビリティをテーマにしたドキュメンタリー12作品を集めました。劇場公開中の作品だけでなく、オンライン上映を行っているもの、DVD化されているものなどさまざまありますので、気になるものがあればチェックしてみてくださいね。
「ムヒカ 世界で一番貧しい大統領から日本人へ」
監督:田部井一真 配給:KADOKAWA
2020年/日本
<劇場公開中>
南米の小国、ウルグアイの第40代大統領を務めたホセ・ムヒカ氏。収入の大半を寄付し、公邸に住むことを拒み、愛妻と愛犬と共に小さな農場で質素な暮らしを続けた彼は、敬意を込めて“世界でいちばん貧しい大統領”と呼ばれています。その名を世に知らしめたのは、国連の「持続可能な開発会議」での名スピーチ。“人間の幸せとは何か”を問いかけ、世界中の人々の心を動かしました。ムヒカ氏のメッセージの数々は、SDGsを考えるうえでの道しるべとなるはずです。
「タネは誰のもの」
監督・撮影・編集:原村政樹
配給:きろくびと
2020年/日本
<劇場公開中>
<オンライン上映あり>
2020年に国会成立が見送られ継続審議となった「
種苗法改定案」。賛否が渦巻く中、自家採種・自家増殖している農家と種苗育成農家の双方の声を伝えるために、全国各地の農業の現場を取材したのが本作です。弁護士で元農林水産大臣の山田正彦氏がプロデューサーを、映画「お百姓さんになりたい」などを手掛けた原村政樹氏が監督を務めています。タネのグローバル化は、消費者である私たちに何をもたらすのでしょうか。未来の農業はどんな姿をしているのかを想像しながら観たい作品です。
「プラスチックの海」
監督:クレイグ・リーソン
配給:ユナイテッドピープル
2016年/イギリス・香港
<劇場公開中>
多くの科学者や識者が警鐘を鳴らす海洋プラスチック問題。監督のクレイグ・リーソン氏が、同業であるジャーナリストや海洋学者、環境活動家らとともにプラスチックごみによる海洋汚染の実態、人体や動植物・微生物に及ぼす影響を調査・撮影しています。年間800万トンものプラスチックが海に捨てられ、大半は海底に沈み、海面や海中を漂うプラスチックも永久に分解されないまま“マイクロプラスチック”になっていくという現実。豊かな海を守るために、まずは現状を知ることから始めてみませんか。
「もったいないキッチン」
監督:ダーヴィド・グロス
配給:ユナイテッドピープル
2020年/日本
<劇場公開中>
日本人が大切にしてきた“もったいない”精神に魅せられ、オーストリアからやってきた“フードアクティビスト(食材救済人)”のダーヴィド・グロス氏。捨てられてしまう食材をレスキューするために、キッチンカーで東北から九州まで1600kmを4週間の旅をしながら食品ロスと向き合います。日本の食品ロスの現実を知るべく現場を訪問したり、道中で出会った生産者やシェフとともに、捨てられてしまう食材をおいしい料理に変身させたりしながら“もったいない”のポジティブな解決方法を見出していきます。
「いただきます2 ここは、発酵の楽園」
監督:オオタヴィン/配給:いでは堂
2020年/日本
<劇場公開中>
<オンライン上映あり>
食育で知られる福岡の保育園を描いた映画「いただきます1 みそをつくる子どもたち」の続編です。“植物、微生物、ありがとう”をテーマに、田植えや稲刈り、羽釜の炊飯まで園児たち自身がおこなう保育園や、子どもたちと土づくりのワークショップを続けている野菜農家の方、年間40時間もの農業授業を続ける小学校、「奇跡のりんご」で知られる木村秋則氏の畑などを訪ね、食を支えている農業と、植物を育てる喜びを追っていきます。食にかかわるSDGsの目標にもつながっている内容でもあります。
「コスタリカの奇跡 積極的平和国家のつくり方」
監督:マシュー・エディー、マイケル・ドレリング
配給:ユナイテッドピープル
2016年/アメリカ・コスタリカ
<オンライン上映あり※>
<DVD発売中※※>
※上映日限定
※※発売・販売元:ユナイテッドピープル
1948年に軍隊を廃止し、軍事予算を社会福祉に充て、国民の幸福度を最大化する道を選んだコスタリカの奇跡に迫ったドキュメンタリー。軍隊廃止を宣言したホセ・フィゲーレス・フェレール氏や、ノーベル平和賞を受賞したオスカル・アリアス・サンチェス元大統領、ジャーナリストや学者などが登場します。同国は軍事予算をゼロにしたことで、無料の教育や国民皆保険制度を実現し、環境のために国家予算を振り分けた結果、2016年の世界ランキングでは地球幸福度指数が世界一に。平和の本質とは何かを考えたくなります。
「グリーン・ライ エコの嘘」
監督:ヴェルナー・ブーテ
配給:ユナイテッドピープル
2018年/オーストリア
<劇場公開中>
スーパーで見かける“環境に優しい”商品を買うだけで、野生動物や熱帯雨林が救えるというのは本当なのでしょうか。真実を知りたくなったブーテ監督は、世界一周航空券を買い、専門家とともに実態を探る旅に出発。どうすれば環境破壊をせずに済むのか。買わないことなのか、正しく選択して消費することなのか。耳障りの良い言葉に隠された、残酷な真実とは––。世の中にあふれる情報を鵜呑みにするだけでなく、時には“わかりやすさ”の裏側を知ろうとする姿勢も大切であることを教えてくれる映画です。
「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」
監督:ジョン・チェスター
配給:シンカ
2018年/アメリカ
<劇場公開中>
殺処分寸前で保護した愛犬トッドの鳴き声が原因で、ジョンとモリーの夫婦はロサンゼルスのアパートを追い出されてしまいます。料理家である妻のモリーは、本当に体に良い食べ物を育てることを決意し、夫婦で愛犬を連れて郊外の荒れ果てた農地へと移住することに。生活環境がガラリと変わった2人は、大自然の厳しさに翻弄されながらもそのメッセージに耳を傾け、命のサイクルを学んでいきます。自然を愛する夫婦が夢を追う8年間の奮闘を描いた本作。彼らの“究極の農場”は、持続可能な農業や気候変動について考えるきっかけにもなります。
「私はあなたのニグロではない」
監督:ラウル・ペック
配給:マジックアワー
2016年/アメリカ、フランス、ベルギー、スイス
<DVD発売中※>
※発売元:マジックアワー、販売元:オデッサ・エンタテインメント
公民権運動の中心人物となった作家、ジェームズ・ボールドウィン。彼の未完の原稿をもとに、記録映像を交えながら、根深い人種差別の歴史や本質が変わっていない現実を浮き彫りにした作品です。黒人公民権運動の活動家でいずれも暗殺されたメドガー・エバース、マルコムX、マーティン・ルーサー・キングの3人の生き様を追いながら現代の「ブラック・ライヴズ・マター」に至るまで、アフリカ系アメリカ人の激動の現代史を描いています。
「ジェンダー・マリアージュ 全米を揺るがした同性婚裁判」
監督:ベン・コトナー、ライアン・ホワイト
配給:ユナイテッドピープル
2013年/アメリカ
<DVD発売中※>
※発売・販売元:ユナイテッドピープル
愛する人を、愛する社会に・・・。2015年6月、全州で同性婚が容認されたアメリカ。そこに至るまでには、愛と涙の積み重ねがありました。しかし2008年11月、同性婚が合法とされていたアメリカ・カリフォルニア州では結婚を男女間に限定する州憲法修正案が通過し、同性婚が再び禁止されることになります。これを人権侵害であるとして州を提訴したのが二組の同性カップル。愛とは、家族とは、人権とは。同性婚をめぐる歴史的な裁判と、彼らのかつてない闘いを5年以上に渡って追い続けた作品です。
「バベルの学校」
監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
配給:ユナイテッドピープル
2013年/フランス
<DVD発売中※>
※発売・販売元:ユナイテッドピープル
パリ市内の中学校のあるクラスに集まった、フランスに移住して来たばかりの24人の生徒たち。アイルランド、セネガル、ブラジル、モロッコ、中国……。世界の縮図のような多文化学級で、20の異なる国籍を持つ10代の彼らが見せてくれる無邪気さ、熱意、そして悩み。宗教や文化の違いを越えて、友情を育むことができるのでしょうか。生徒や先生たちの姿を通じて、お互いの違いを認め合うことや、他者への理解を深めることの大切さに改めて気づかされます。
「ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償」
監督:アンドリュー・モーガン
配給:ユナイテッドピープル
2015年/アメリカ
<DVD発売中※>
※発売・販売元:ユナイテッドピープル
“あなたの服の本当のコストを知っていますか?”大量生産・大量消費が問題視されるファッション業界の闇を浮き彫りにしたドキュメンタリー。きらびやかなランウェイからスラムまで、世界中で撮影され、ステラ・マッカートニーをはじめとするファッション界で影響のある人々や、世界的に著名な環境活動家のヴァンダナ・シヴァへのインタビュー、フェアトレードブランドの活動などにも光をあてています。身近な衣服をきっかけに、SDGsの目標のひとつでもある「つくる責任 つかう責任」を考えてみませんか。
※それぞれの作品の上映館・上映期間、配信期間は変更になる可能性がありますので、各劇場サイトをご確認ください。
一つひとつの作品から見えてくる現実や世界。今起きていることは、これからの未来へとつながっていきます。描かれている内容は一部にすぎないけれど、こうした映画を観て知ることも、SDGsにつながる身近なアクションのひとつです。