アノニマ・スタジオWeb連載TOP > 暮らしのなかのSDGs もくじ > その13 コンポスト、いろいろ。【中村元気さん編】
イラスト/江夏潤一
その13
コンポスト、いろいろ。
【中村元気さん編】
コンポストといえば、生ごみを堆肥にするイメージを持つ人が多いはず。その一方、まったくあたらしい発想で、街にひらかれたコンポストというものも存在します。家庭でも街中でも、コンポストがあることで共通しているのは、「循環」を感じられるということ。
今回は、地域コミュニティ「CATs」や、ゼロウェイストをテーマとした団体「530」の代表を務める中村元気さんにお話を伺っています。
ローカルに根ざして活動し
CATs/530
「CATs」とは、キャットストリートにあるお店で働く人たちを中心としたコミュニティ。月に一度のごみ拾いは今年で8年目。そのほかにも街中の落ち葉で堆肥を作ったり、都心でも気軽に土にふれられる場を設けたり、さまざまな活動をしています。メンバー同士が元々クライミング仲間だったり、飲み会などもするそうで、そういった関係性の延長に今の形があります。消費のイメージが強い街だからこそ、人とのつながりや地域の循環と向き合いたいという思いがあります。
「キャットストリートの花壇にはりんごの木があって、僕らが落ち葉で作った堆肥を使ってもらっているんです。最終的にはりんごを収穫してシードルを作っています。酸味や渋味を生かすから、青りんごのまま採るんですよ」。キャットストリートと聞いて花壇を思い浮かべる人は、一体どのぐらいいるのでしょう。さらにはりんごを育てているなんて、と驚くばかり。長野県飯田市座光寺の方と個人的に交流があった原宿の方との交流の中で15年ほど前に植樹され、原宿と座光寺で収穫したりんごを合わせてシードルを製造しているのだそうです。
堆肥はそのほかの花壇にも使われ、さらには菜園やガーデニングを行う友人や知り合いにも分けているのだとか。「花壇を地域の人に使ってもらおうという話が最初にあって、そこでごみ拾いをしていた僕らがたまたまそこに乗せてもらったというか。ちなみに明日は晴れなので受粉作業をします」。と中村さんが話をしていると、ミツバチがやってきて花のまわりを飛び回っていました。
東京・原宿発
そもそも、なぜ「落ち葉」なのでしょうか。はじまりは、表参道にあるケヤキ並木の落ち葉を使って「落ち葉拾い大会」を開催するにあたり、ある小学生の女の子に「拾った落ち葉は何に使うの?」という疑問を投げかけられたことから。
「雨が降ったりすると路面が滑りやすくなるから、落ち葉は綺麗にしておかないといけないんだけど、都は結構な予算を使って清掃業者に依頼している現状があって。捨てるのにお金をかけるんだったら、何か使えるようにしたいねって話になったんです」。落ち葉拾いは地域の小学生や福祉施設の職員・利用者の方と数日間で集中的に行い、70ℓの袋で約300袋もの量を集めます。
CATsの活動のひとつである「CATs Urban Compost Club」は、都市型農業にかかわる人の交流の場でもありたいと、知識を集約しオープンソース化していきたいと思っているそう。コンポストは現在、同じエリアの保育園と福祉施設の2カ所に設置。使う材料は落ち葉のほか、原宿・キャットストリートにある「小池精米店」から分けてもらっている米ぬか、そして水。それらを混ぜて風通しの良い状態で放置し、定期的にかき混ぜるのだそう。「コンポスト自体は新しいことではないけど、原宿っていう場所でやるから面白い。仕組み化したいわけでも効率的にやりたいわけでもなくて、地域の人が、地域にある資源をどうやって循環させるかみたいなことを実際に体験する実験なんです。あくまで手ざわりのある、地に足のついた活動じゃないと魅力的じゃないですよね」。
「コミュニティというもの自体に元々興味があったんですけど、ごみの問題が深刻さを増していったというか。自分の中では環境活動の方にシフトしつつありますね。あとは、捨てられてしまうもので何かを作ることにも興味があります。今まで作ったのだと、パンの耳から作ったbread beer、最近ではバージンパルプを一切使わずに作った紙、The paperとか」。
あくまで自分たちの暮らしをより良くするために、環境問題に取り組む「530」。ゆえにホームページで掲げているのは「WE ARE NOT 意識高い系」という言葉。
「コンポストもそうですけど、上手くいくかどうかなんて最初はわからないんです。答えが見えているものばっかりじゃなくて、面白そうじゃね?っていうのが活動の主旨や動機でもいいはず。でも、世の中のことって大体その逆が多いですよね。ソーシャルアクションみたいなジャンルって、目的が先に求められがち。“循環”って言葉も、よくよく考えてみれば最初はゼロなんです。そこから色んなパーツが組み合わさって巡り巡ってくるわけで。何でもやってみないと循環も生まれなければ見えてこないし、つながらないんです。だから一個ずつやって、つなげてかなきゃいけないんです」。
物事の本質とはわかりにくいもの。だからこそ地道に、自分の手と足を使い土を耕すように、実体験として積み上げていくことは大切なのかもしれません。
ローカルに根ざして活動し
暮らしのより良い土壌をつくる
CATs/530
中村元気さん
消費の中心地で感じる土の気配
土曜の朝の原宿は人通りも少なく、意外なほど静か。9時ぐらいになると、キャットストリートのあちらこちらから仲間たちが集まりだし、道に落ちているごみを拾い始めました。中村元気さんを中心としたコミュニティ、「CATs」のクリーンアップ活動です。「CATs」とは、キャットストリートにあるお店で働く人たちを中心としたコミュニティ。月に一度のごみ拾いは今年で8年目。そのほかにも街中の落ち葉で堆肥を作ったり、都心でも気軽に土にふれられる場を設けたり、さまざまな活動をしています。メンバー同士が元々クライミング仲間だったり、飲み会などもするそうで、そういった関係性の延長に今の形があります。消費のイメージが強い街だからこそ、人とのつながりや地域の循環と向き合いたいという思いがあります。
キャットストリートにりんごの木?
ごみ拾いをしながら、中村さんはこんな話をしてくれました。「キャットストリートの花壇にはりんごの木があって、僕らが落ち葉で作った堆肥を使ってもらっているんです。最終的にはりんごを収穫してシードルを作っています。酸味や渋味を生かすから、青りんごのまま採るんですよ」。キャットストリートと聞いて花壇を思い浮かべる人は、一体どのぐらいいるのでしょう。さらにはりんごを育てているなんて、と驚くばかり。長野県飯田市座光寺の方と個人的に交流があった原宿の方との交流の中で15年ほど前に植樹され、原宿と座光寺で収穫したりんごを合わせてシードルを製造しているのだそうです。
堆肥はそのほかの花壇にも使われ、さらには菜園やガーデニングを行う友人や知り合いにも分けているのだとか。「花壇を地域の人に使ってもらおうという話が最初にあって、そこでごみ拾いをしていた僕らがたまたまそこに乗せてもらったというか。ちなみに明日は晴れなので受粉作業をします」。と中村さんが話をしていると、ミツバチがやってきて花のまわりを飛び回っていました。
東京・原宿発
「落ち葉コンポスト」
そもそも、なぜ「落ち葉」なのでしょうか。はじまりは、表参道にあるケヤキ並木の落ち葉を使って「落ち葉拾い大会」を開催するにあたり、ある小学生の女の子に「拾った落ち葉は何に使うの?」という疑問を投げかけられたことから。「雨が降ったりすると路面が滑りやすくなるから、落ち葉は綺麗にしておかないといけないんだけど、都は結構な予算を使って清掃業者に依頼している現状があって。捨てるのにお金をかけるんだったら、何か使えるようにしたいねって話になったんです」。落ち葉拾いは地域の小学生や福祉施設の職員・利用者の方と数日間で集中的に行い、70ℓの袋で約300袋もの量を集めます。
CATsの活動のひとつである「CATs Urban Compost Club」は、都市型農業にかかわる人の交流の場でもありたいと、知識を集約しオープンソース化していきたいと思っているそう。コンポストは現在、同じエリアの保育園と福祉施設の2カ所に設置。使う材料は落ち葉のほか、原宿・キャットストリートにある「小池精米店」から分けてもらっている米ぬか、そして水。それらを混ぜて風通しの良い状態で放置し、定期的にかき混ぜるのだそう。「コンポスト自体は新しいことではないけど、原宿っていう場所でやるから面白い。仕組み化したいわけでも効率的にやりたいわけでもなくて、地域の人が、地域にある資源をどうやって循環させるかみたいなことを実際に体験する実験なんです。あくまで手ざわりのある、地に足のついた活動じゃないと魅力的じゃないですよね」。
「WE ARE NOT 意識高い系」
「530」という団体としても活動している中村さん。ゼロウェイストをコアコンセプトに「ごみを出さない経済循環(サーキュラーエコノミー)」のある暮らしを提案する20代〜30代の活動家たちのイニシアチブで、環境NPOとしては1年ほど、活動自体は3年くらい前からスタートしました。「コミュニティというもの自体に元々興味があったんですけど、ごみの問題が深刻さを増していったというか。自分の中では環境活動の方にシフトしつつありますね。あとは、捨てられてしまうもので何かを作ることにも興味があります。今まで作ったのだと、パンの耳から作ったbread beer、最近ではバージンパルプを一切使わずに作った紙、The paperとか」。
あくまで自分たちの暮らしをより良くするために、環境問題に取り組む「530」。ゆえにホームページで掲げているのは「WE ARE NOT 意識高い系」という言葉。
「コンポストもそうですけど、上手くいくかどうかなんて最初はわからないんです。答えが見えているものばっかりじゃなくて、面白そうじゃね?っていうのが活動の主旨や動機でもいいはず。でも、世の中のことって大体その逆が多いですよね。ソーシャルアクションみたいなジャンルって、目的が先に求められがち。“循環”って言葉も、よくよく考えてみれば最初はゼロなんです。そこから色んなパーツが組み合わさって巡り巡ってくるわけで。何でもやってみないと循環も生まれなければ見えてこないし、つながらないんです。だから一個ずつやって、つなげてかなきゃいけないんです」。
物事の本質とはわかりにくいもの。だからこそ地道に、自分の手と足を使い土を耕すように、実体験として積み上げていくことは大切なのかもしれません。
Profile
中村元気(なかむら・げんき)
2014年、東京・原宿のキャットストリートという通り沿いで地域活動 CATsを始める。2018年から地域のごみ問題の根本解決を目指すために「0 waste=ゴミ・無駄のない」ライフスタイルの提案を行う活動”530week”を開始。
instagram:@cats_genki
https://530week.com/
<<連載もくじ はじめに >>
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暮らしのなかのSDGs
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