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ベア・ジョンソンさん&佐々木俊尚さん 2017年12月12日 イベントレポート 前編
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第一部はベアさんの講演、第二部ではジャーナリストの佐々木俊尚さんをお迎えしてのクロストークとなります。
家族4人、1年間に出すゴミの量は1リットルという、驚異的なゼロ・ウェイスト・ライフを送っていらっしゃるベアさんのお話をお楽しみください。
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いまご紹介がありましたが、ゴミはもう年に1リットルではなくて、さらに半分になっています。
私は4人家族で息子がふたり、17歳のマックスと16歳のレオ、そして夫のスコットです。私はゼロ・ウェイストを始める数年前に現在の住まいに変えたのですが、当時「ゼロ・ウェイスト」とは、企業がゴミをどうマネジメントするかということ、つまり工業的な製造過程で使われる言葉で、家庭では使われていませんでした。でもこの言葉を聞いた時、これはぜひ家でやろうと思ったんです。当時はなんのガイドラインもなく、今みたいにブログなどもなかったので、自分自身でいろいろ研究したり本を読んだりして調べるしかありませんでした。
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そんな風にいろいろやってみた結果、私は5つのルールにたどり着きました。そして1年後には、ゴミは1リットル以下になっていました。
①REFUSE――JUST SAY NO!
まず一番初めにやってほしいのが、REFUSE=断ること。使い捨てのプラスチックに対して「いらない」ということです。私たちが暮らしている現代の消費社会には販促物が溢れていますが、無料グッズを断ることも重要です。受け取ってしまうと、需要ができてしまうのです。すると、また石油を掘って新しいものを作る需要と供給のチェーンができてしまう。断ることが非常に大事です。ダイレクトメールや迷惑メール、飛行機の中での食事、名刺なども断るべきものにあたります。②REDUSE――ものを減らす
次にREDUSEですが、これは必要なものをどれだけ少なくできるかということです。最低限必要なものはもちろんありますが、それ以外は処分しましょう。本当に必要なものだけ持っていることが心地いいと感じるようになります。私は家全体を断捨離することにしました。いらないものを外に出して、それを必要としている方たちに対してフリーマーケットしたんです。キッチンの引き出しにはいろいろなものが入っていました。たとえば木のヘラが10本。でも私にはひとつしか必要ないことに気づいたのです。ほかの道具も同じで、私に必要なのはこれだけだと気づきました。
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そして私のコスメですが、肌に使っているオイルは量り売りで買っているもの。アイライナーには、燃やしたアーモンドの灰を粉にして使っています。チークに使うブロンザーはココアパウダーで、量り売りで買って、まゆげにも使っています。
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次男、レオもミニマリストです。7枚のTシャツと長袖のシャツが2枚、スニーカーとビーチサンダルが1足ずつ。その全部が飛行機内持込可能なサイズのスーツケースに入ってしまいます。家族みんな、それぞれの荷物が機内持込用のキャリーケースに入ってしまいます。全部入るから、いちいちなにを持っていくかなんて考えなくていいんです。週末や休暇にどこか出かけるとなったら、それぞれ荷物をパッキングして、クリーニングサービスを頼んで家を明け渡し、民泊で家を貸すことで私たちのバケーション費用をまかなうことまでできるのです。
③REUSE――再利用
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メッシュのバッグには野菜。布袋には乾いたもの、小麦粉や砂糖などを。牛乳は返すことのできる瓶です。バラ売りで卵が買えるファーマーズマーケットには、卵ケースを持っていきます。ワインも量り売りで買っています。あまり多くはないのですが、量り売りで売ってくれるワイナリーもあります。
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④Recycle――再生処理へ
4つめのルールはリサイクルですが、これは「Refuse」「Reduce」「Reuse」ができなかったものだけ行います。リサイクルがなるべく必要ないように、家の中に余計なものが入ってこないようにするのが原則です。この暮らし方をするようになって、プラスチックのことをよく知るようになりました。環境によくないだけでなく、健康にもよくないということもわかりました。パーティなどでチーズがラップに包んであると、その味がわかるようになったのですが、つまり食べ物にプラスチックが触れているということは、プラスチック自体が食べ物に染み付いているということなんです。リサイクルされるプラスチックは少なく、もしリサイクルされても、それが再びリサイクルされることはありません。例えば公園にあるベンチがプラスチックでできていたとすると、それはもうそのまま埋め立てゴミになってしまいます。だから、プラスチックはなるべく避けるようにして、ガラスや紙や金属、木などを選ぶようにします。そうすることによって、もっとリサイクルができるようになるのです。
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⑤Rots――堆肥化する
そして最後のルールがRots。これはコンポストのことです。これが最後の手段で、これで捨てられなければあとは埋め立てゴミに、日本の場合だと燃やすゴミになりますね。床のホコリ、バターのパッケージなどもコンポストできます。私はバターだけはパッケージされているものを買っています。夫と息子、そして私の前髪もコンポストしています。私の長い髪はリサイクル(ヘアドネーション)しています。肘のところまで伸びたら切って、がん患者のために寄付できるのです。アジア系の髪はとても喜ばれるそうですよ。みなさんもいい髪の毛だから、やってみるといいかもしれません。
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ゼロ・ウェイスト・ライフスタイルは最高の幸福感をもたらしてくれます。ガンジーは、幸福感というのはあなたが考えること・言うこと・行うことがすべて調和しているときに起こるものだと言いました。ゼロ・ウェイストは、まさにそれを体現できるライフスタイルです。
私は18歳のときに、家事手伝いとしてアメリカに来ました。その頃は、将来こんなふうにゼロ・ウェイストについて世界各地で話したりするようになるなんて、まったく想像できませんでした。ブログや本、メディアでの講演活動などによって、私は世界的にゼロ・ウェイストの動きを生み出しています。始めたときは、そんなことをやってもなんにもならないとか、いろいろ批判されました。でも今、それは間違っている、とはっきり言えます。世界中の人々をインスパイアすることができたのですから。なかでも顕著なのが、各地に量り売りのお店ができ始めたということです。
ドイツでは、マリーさんという人が初めて量り売りのお店をオープンしました。スイスでも一年前に量り売りのお店がオープンし、カナダのモントリオールでは8店舗がオープンしたそうです。アイルランドのダブリンで講演をした後には5つ、南アフリカのケープタウンでも講演のあと3店舗がオープンしています。スイスでは「ゼロ・ウェイスト・スイスランド」という名前で女性グループが活動しています。この方はフランスで、私の本を読んでリターナブル(返せる容器)を使った量り売りのお店を初めたそうです。
ところで、彼らはしばしば同じことを口にしています。何だと思います? それは、「もっと早く始めていればよかった!」です。ゼロ・ウェイストのライフスタイルでなにかを失うでしょうか?また、どんな発見があるでしょうか? 想像してみてください。ありがとうございました!
(会場拍手)
(後編に続く)
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Bea Johnson
2008年から家族で「ゼロ・ウェイスト・ライフ」を営むカリフォルニア在住のフランス女性。アメリカ人の夫とふたりの息子の4人家族で、1年間に出すごみの量はわずか1リットル弱。その驚くべき挑戦と優雅で洗練された暮らしぶりは、月間25万PVの人気ブログ「Zero Waste Home」から世界に発信される。2011年、アメリカの環境問題に貢献した個人を称えるGreen Award大賞を受賞(「地球にやさしい親」部門)。2013年に刊行された本書もベストセラーとなり、「ゼロ・ウェイストの伝道師」として、BBCやニューヨークタイムズなど多数のメディアに登場。ニューヨークのローレン・シンガーなど、彼女を追ってゼロ・ウェイスト・ライフに踏み出す人々が後を絶たない。
公式サイト:www.zerowastehome.com/
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佐々木俊尚
1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、月刊アスキー編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治・経済・社会・文化・食まで、幅広いジャンルで、綿密な取材と独自の視点で切り取られた著書は常にベストセラーとなっている。『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)など著書多数。最新刊は『広く弱くつながって生きる』(幻冬舎新書)。
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ゼロ・ウェイスト・ホーム
ーごみを出さないシンプルな暮らし―
著:ベア・ジョンソン訳:服部雄一郎
本体価格1700円(税別)
家族4 人が1 年間に出すごみの量がガラス瓶1 本分(= 1 リットル)という、驚異の「ゼロ・ウェイスト(ごみを出さない)」生活を続けている著者。そのクリエイティブな工夫を紹介する、実践ガイドの日本語版です。「ごみの分別先進国」と言われる日本でもシンプルな生活や生き方が話題となっている昨今、環境問題やリサイクルに意識的な方のみならず、大きな注目を集めているテーマです。モノを減らせばごみも減り、環境的・経済的にも大きなメリットが生まれる。本当の豊かさとは?快適な生き方とは?「断捨離」「ミニマリズム」のさらに一歩先を行く、持続可能でシンプルな暮らし方の提案のみならず、人生で大切なことや見つめ直すべきことに気づかせてくれる一冊。先進的で洗練された暮らしぶりも必見です。
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