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11月□日 金沢にて。
目ぼしい宿もビジネスホテルもどういうわけか満室なのでシングルルームにエキストラベッドのちょっと割高なシティホテルに
宿をとった。宿ばかりか、寿司屋も居酒屋も有名店はどこも予約でいっぱい。世界は凄まじい情報社会なのだった。

そんな人気の町の、人気の美術館のすぐ脇にある北山堂ビルの地下1階
名曲喫茶「ぱるてぃーた」への階段を下りる。
 降りると左にドアがある。
  ドアには紙が貼ってあって
   紙には「珈琲、紅茶、400円のみ」と書いてある。
    そーっとドアをあける。
     テーブル席が5つほど。
      客人は一人。
       タンノイのスピーカーからミッシャ・マイスキーのチェロの音が聞えている。
        いくつかの椅子の座り心地を確かめて真ん中の四角いテーブル席におちついた。
         メニューはない。
          入口にあった張り紙に従って珈琲を注文。

               店主は武満徹さんが、うんと髪をながくしたような風貌で
               珈琲を淹れながら音色に合わせてバッハを口ずさんでいる。
               珈琲を運んでテーブルに置くとカウンターの中へ戻り、読みかけの本を開いた。


                        なんだろう?この、現実離れした感じ。


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