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   入ると四角い石畳の庭が広がっている。
   例の通り白くペイントされた木が植えられている。
   外の喧騒が嘘のようだわ。決まり文句を小さく呟く。


聞こえるのは鐘の音、鳥の声、ほうきの音と軽やかな口笛。
ほうきの人が口笛をふいている。
口笛は四角い庭を四角く囲む建物に反響して
気持ちよさそうに昇ってく。
四角い庭を横切って向かいの建物の階段を上る。
口笛の音が聞こえなくなった。
階段の天井に何かが描かれている。

何かがわかるにつれもう、1歩も歩けなくなった。
「これは、、、すごいね」「すばらしいね」
それはこの世のものとは思えない表情で立ち上がる
イダルゴ神父だった。
独立というものがどういうことなのか、
ヨーロッパの有名な絵画を見ても
近くに感じたことはこれまでに1度だって無かった。
様々な大きさのキャンパスの中の世界。
今だってそれがどういうことなのか真には分からない。
だけど私の頭の中は色々なことをまざまざと想像した。
壁画にはきれいごとではない、言葉では表現しつくせない感情が溢れていた。


     階段を進むと2階の回廊にでる。回廊は四角い形をしていて
     バルコニーから見下ろせば四角い中庭。
     おじさん、何事もなかったかのように掃除と口笛を続けている。


     あっ、おじさんには今のところ何事もない。

     鳥の声、何度目かの鐘の音。             

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