踊りの間、雨は降らなかった。 ミステリアスでカッコイイ吉田東洋はいつのまにか、 運に恵まれない、体の中に何か燃えるものをだぎらせた男になっていた。 男は最後の神頼みにやってきたのだった。それはそれは恐ろしく悲しい男の物語。 なんてどこにも書いていないけれど、物語が自然についてくる、そんな踊りだった。 蟻は相変わらず。雀がやってきて何かをついばんでいる。 風がざわわと木を揺らし遠くで誰かが熊の頭を撫でている。 コトリンシャン、悲しげなシベリヤの音色。ゴーン。お寺の鐘が鳴る。お尻が痛い。 不運な男はひとり、狂ったように神社の鐘を鳴らし続けていた。 そんな様子を車座になって眺めている。 |
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