私は少し離れたところからうっとりと二人の様子を眺めていた。
「もうね、納得がいかないの。手がね、自由に動かない。調子が良ければ作るんだけど、ダメなのよ」
ご主人がダメだと言ったこけしは私にはちっともダメには見えなかった。確かに同じではない。
でもそれは、当り前の事じゃない?
「ちっともダメに見えません」と言ってみる。
けれどもそんなこと、ご主人にとっては何の励ましにもならないのだと、しばらくして気がつく。
穏やかに笑うこの人には80年かけて築いてきた確固とした何かがあるのだ。
そうして、未だに妥協をしない。なんという強い人だろう。