ふと思う。世間はどうしてこういうものに感じないのだろう。
世間とは、あまりあてになるものではないのかもしれないぞ。
ああ、だけど、それはここへ来てはじめて感じる良さなのかもしれない。
ここは世間とはあまりにかけはなれているのかもしれない。
「こけしはね、木地がうまく挽けたらほとんどうまくいったも同じです。
こうね、顔がみえてくるから。
そうしたら、その通り、すっすっとね、描けます。
筆はね、走らなければなりませんけれども、走りすぎてはいけません。
こうね、木地にぶつけるようにね」
ご主人は左手にこけしを持って右手で絵を描くような素振りをしながら言った。
腰が「くっ」と入っている。
私たちは特にこけしを作るつもりはないのだけれど、
ご主人はこけし作りにおける心構えを色々と教えてくださる。
このお話が、不思議なくらい、イラストレーションにも共通していた。
胸が高鳴る。