はじめに わたしの猫
とにかく猫に夢中なのだ。
いったいいつからこんなに猫に恋い焦がれているのか、
その始まりは全然覚えていないのだけれど。
子どもの頃、家では猫を飼えなかったので、
記憶の中にいる猫は、みんなぷりぷりした野良猫たち。
追いかけても、追いかけても、振り向いてはもらえなくて、
シャーッっと威嚇されるか、悪くするとひどく引っ掻かれた。
それでも健気に、後をつけていた報われない子どもがわたしだった。
大人になって、はじめて猫を飼った。
25歳の誕生日の夜、当時の恋人と友達と一緒に近所を歩いていたら、
「子猫あげます」の張り紙に出会ったのだ。
次の日、早速連絡をすると、飼い主さんが5匹の子猫たちに会わせてくれた。
どの子にしようか迷っていると、ぴょんと肩に飛びのってきたのが、
今でも一緒に暮らしている、白黒猫のニコン。
ロンドンへ引っ越して来て、もう10年になる。
昼間は寝てばかりだけれど、お客が大好き。
男子なのに、我が家で開かれる女子会には、満を持して出席する。
ロンドンへ来てから、家族も増えたし、引っ越しも何度かしたけれど、
驚くべき順応性で生活になじんで、
まるで最初からロンドンの猫だったみたい。
その姿を見るたび、幸せな気持ちをもらう。
いつも一緒にいてくれて、ありがとう。
これからも、ずっと元気でいてね。
わたしの一番好きなロンドンの猫のはなし。