第5回 リリーさんの猫
仕事柄、誰かのお家を訪問させてもらうことは多い。
インテリア取材とか、おうちでのインタビューとか。
そんな時、どこからか猫がにゃーんとでてくると、
もう、うれしくってたまらない。
リリーさんのねこ、「チェスター」にもそんな風に出会った。
週末だけオープンする、小さなジャムショップ
「ロンドン・バラ・オブ・ジャム」というお店が
とてもとても、かわいくて、そのオーナーのリリーさんに、
ぜひおうちも取材させてくださいとお願いして、
おうかがいしたところに、現れたのだった。
イギリスでは「ブリティッシュブルー」と呼ばれる
ベルベットのような美しいグレーと、
なかなか、がっしりと筋肉質な体格の、
なんと抱き心地の良さそうなこと!
マンチェスターの友人から、
子猫の時に譲ってもらったから、名前は「チェスター」。
冒険家気質で、毎朝ご飯を食べたら、まっすぐお外へ。
日がな一日、虫を追いかけたり、昼寝をしたりして、
毎日、夕方4時ぴったりに帰ってくるのだとか。
元は、ロンドンの有名レストラン「セントジョン」で
ペイストリーシェフとして働いていたリリーさん。
彼女が自宅の小さな台所で作るジャムは、
果物の形を残した、しっかりとした食感と、
茶葉やハーブを組み合わせた独特の味が大人気。
フィグ&アールグレイ、ルバーブ、クランベリー
チェリー&グラッパ、グレープ&セージなどなど
食材を深く理解する彼女ならではのレシピが並んでいる。
チェスターはと言えば、
時に、調理器具が大きな音をたてるキッチンは苦手だけれど、
箱詰めや、ラベル張りの作業を見ているのは大好き。
リリーさんのとなりで、ジャムが仕分けられてゆくのを
幸福そうに、何時間でも眺めているのだそう。